FE103バスレフの製作


はじめに

  このユニットは低音がでないのを気にしなければ本当に良いユニットです。ピュア
で繊細な音がします。女声コーラスや無伴奏フルートなどはもともと低音が無いので
それらを聴く分にはなんら気にならないわけです。(小型密閉箱の場合)

  しかしこの不相応にQoの低いユニットにハイファイバスレフの設計が可能なので
しょうか。成功例はいまだないように思えます。


  これが平面バッフルでの周波数特性です。(長岡鉄男氏実測による)


  64Hzくらいでは中高域に比べ音圧差が23dBあるので、ここにバスレフダクトの
共振周波数をもってくると駆動力不足になりそうです。


    周波数特性1m
  

  これが長岡鉄男氏作BS−3です。fd=68Hzというチューニングです。アンサンブル
にとって重要な100〜300Hzがあまりに淋しい特性になっています。68Hzでは平面バッフル
よりも+10dBになっています。



  このシステムを見てください。

FE103ペリスコープ


  fd=90Hzというチューニングでアンプ側で電流正帰還とローブーストをかけて
あります。そこまでやるとちょっとやりすぎかもしれません。


  さて今回は小型のバスレフでどのようにチューニングが可能か追求してみます。箱は小型
バスレフ
集成材仕様です。

  ダクト長6cm



  この状態でいろいろ試して見ることにします。


   foが80Hzといっても、どうやら箱にいれたとたんにfocが120〜150Hzに増加して
しまうようです。この超ハイコンプライアンスな軽量コーンが細かい音がでる原因でし
ょう。余韻が素晴らしいのです。

  パイオニア箱とフォステクス箱を同時に鳴らすと、面白いことがわかります。高域が
しゃしゃかうるさいのがFE103で、ベースの音はよくきこえているようですが、太鼓の
トンという音は専らパイオニアからきこえます。FE103からはパタパタとしかきこえませ
ん。ハイコンプランスゆえに入力によってすぐ頭打ちになり紙の固有音がきこえるわけ
です。また感度が高いのでアンプのクオリティをよく判別してくるので、アンプの質感が
いまいちの場合わかってしまいます。

  FE103はこのように一般向けとはいえませんが、超ハイクオリティのアンプでソース
を選べば次元の違ういい音を出してくれるマニア向けのユニットなのです。


  
裸ユニットのインピーダンスです。新品ですがfo=86Hzになっています。




  ダクト長6cm



  foc1=180Hz、fd=110Hzくらいになっています。わりとまともです。


ポンたたき法で確認してみます。



  foc1=183Hz 、fd=90Hzといったところでしょうか。パイオニア箱よりもかなり低いですが、
無理は禁物です。これくらいでよしとしましょう。

  参考

  Qo=0.35

  Q=0.73 (電圧出力アンプ)

  Q=0.61 (電流正帰還アンプ−1.6Ω)

  Q=0.43 (電流正帰還アンプ−3.5Ω)


  Q=1.18 (完全アンプIII)

  Q=1.27 (完全アンプ)

 


   ここでFE103用のバスレフ箱についてふりかえってみましょう。


  内寸 容積 容積減分 ダクト径 r ダクト長 L1xL2 L3+r fd
Fostexの推奨箱 134x270x171 6.150 0.3 5   4.5 19.625 7 110
BS3   6.4 0   3 23 30 26 68
カプセル   6.4 0   3 7.5 28 10.5 103
大吟醸 (162x122-2100)x300 5.2 0.3 4 2 5 12.5 7 96
ミニタワー 126x886x164 18 0.3 4.3 2.15 14 14.5 16.65 35
FE103ペリスコープ   1.38 0.3   1.78 23 10 24.78 97
今回の作品 110x120x170 2.24 0.18+0.5 3 1.5 6 7 7.5 109
BC10バスレフ 149x349x215 11.2 0.2+0.5 3 1.5 2.5 14 4 92


  これをみると、FE103ペリスコープは長大なダクトを小さ目のキャビネットでバランスをとって
いる設計といえます。
  今回の作品はわりとオーソドックスです。


  そうそうFE103の定番といえば、

   Steve Reich "Electric counterpoint"
    tone ハンドベル クローバーベルフレンズ
   荒井由実 コバルトアワー 

   を聴いてみないといけません。音のトランジェントのよさが目覚しくあらわれるソース
です。完全アンプだととくにオーラルエキサイターのような効果が加わります。ユーミンの
超音波ボイスには効果てきめんだと思います。

  ややソフトタッチですが合格です。(ヤマハAST−7にて試聴)


 これぞ究極、完全アンプIIIでドライブ



 工芸漆鎌倉赤にて仕上げてみました。じゅうぶん乾燥させたのちいよいよ自宅レファレンスに
組み込むことに。アンプは完全アンプIIIです。

  完全アンプIIIは素の完全アンプ(出力インピーダンス8.28Ω)に電流正帰還をかけ出力インピ
ーダンスを5.7Ωまで下げたものです。

  松本氏の記事では電流正帰還MFBは電流歪みの問題があるので半分くらいかければじゅう
ぶんとあるので、これは一転して有望になりました。

  電流出力アンプにMFBをかけるという一部アマチュアの長年の夢がとうとう実現した一瞬です。
  (異論があるやもしれませんが)

  シンディ ローパー、スティーリー ダン、マンハッタン トランスファーといったところを鳴らして
みました。この重量感と切れのある低音は独特のものです。中高域のクオリティはさすがに高く、
メーカー品をはるかに上回ります。ローブーストは特に必要なさそうです。

  これは成功かもしれません。(2000年11月22日)