小型バスレフの製作

1 始めに

   いままで密閉型ばかり作ってきたのは、バスレフの計算方法がわからなかったためです。
今回計算できるようになったので、いろいろと作って考察も加えてみたいと思います。さらに
バスレフの能力を極限まで引き出すためMFBも考慮に入れてみます。








2 空気砲とバスレフの違いとは

  空気砲とはダンボール箱に適当なあなを開けたものです。



  横をポンとたたくと穴から空気のかたまりが飛び出します。空気はドーナツ状のうずとなり
  飛んで行きます。この様子は箱に煙を入れてスローで見てみるとよくわかります。

  一方バスレフではダクトの長さがあるので、空気は押出されたあとまた引っ張られて戻り
ます。このバネと質量から共振周波数が生まれるわけです。

  したがってもしダクト長があまりに短いとバスレフ転じて空気砲になる可能性があります。
 


3  大きいバスレフと小さいバスレフ

  ヘルムホルツの共鳴箱のfdは次の式で求められます。




  したがってたとえば fd=100Hzの箱を作ろうとすると、
  


  このような長大なダクトのものや、



  このようなコンパクトなものまで、いろいろな設計が可能です。

  一体どちらが良いのでしょうか。


 4 小さいダクトの箱

  大きいダクトの箱はもうあるので、小さいダクトのを作ってみることにします。
  


  このような板取りで、箱ができます。






(FE103のときは径93mm、パイオニア8cmのときは径72mmとする)




 



  5 エッジレス8cmバスレフの製作

  今回は美音スピーカーS−ST7に使われている8cmユニットを採用することにしました。



 このようにかなり変わった構造をしています。マグネットは強力そうですが、フレームは樹脂製です。

 中づけ用のユニットなので、きれいな丸穴をあける必要があります。半径3.6cmでぐるりと回るように
トリマーを設定、一気に丸穴を開けます。ものすごい発熱なので数cm進むと煙が出てきますが、
わりとうまく行きました。

  バスレフポートは3cmのショートビットで開けます。これは大変困難な作業であることがわか
りました。ドリルが高速に回転するとすべるだけだし、低速のとき削れてゆきますが、くいこんで
とまったりします。とにかく4.5cm進むのはなかなか大変です。

  米松集成材を使用したので、木口を隠す必要はありません。なかなか瀟洒な外観になって
います。

  S−ST7はFE103と比べるととてもおとなしい音といえます。パイオニアのチューニングは
 さすがプロの仕事といえるでしょう。このユニットはとても能力が高いと感じられるので、素材
から料理して味わってみたいところです。


 6 ユニットのインピーダンス特性を測定



  foは約220Hzです。
 

 音圧周波数特性


  参考 パイオニア S−ST7


  8kHzでクロスしています。


  どうやら空気漏れがあったようなので、ゴムパッキンをいれて再測定しました(2004.6)。

   ダクト長6cm

  インピーダンス特性


  今度は計算値と一致しています。速度制御もかかっています。








  いろいろ面白い波形が出てきます。

  このユニットはエッジからも空気が漏れています。(以上追記)


  ということでダクト長6cmに決定です。ネジ式ですので1枚はずすだけです。吸音材を
いれて、裏板をがっちり取り付けました。とても明確で量感も十分な低音です。

  Fostexとの違いは、Fostexの方が微小音にも反応するが、低音が出ず歪みが多い、
pioneerは微小音では反応が悪いが、大振幅では歪みが少なく細かい音もでるという印象
です。面白いユニットです。

  今回は塗装せず白木のままにすることにしました。

  (2000年8月20日完成)


  ASTアンプでの駆動

  ふつうの電圧出力アンプでは制動が不足になると思うので、ヤマハASTアンプの
旧機種か、現在入手可能なパソコン用の
アンプ付きスピーカーからの流用をお勧め
します。
(写真はYST−M15のアンプ部を取り出したもの)








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