交流電流がバランスしても最小歪みとはならない理由
このことはある程度経験的にわかっていましたが、その理由について調べてみます。
12AX7 SRPP
シミュレーター上で交流バランスするポイントを決めることができます。このときのRk=1.7kΩ。
2次歪みを完璧に打ち消すには合成前の信号が同じだけ歪んでいなくてはなりません。しかし、
このときの電流歪みを見てみると上側がかなり低歪みになっています。
歪み最小ポイントでは、上側電流が2.5倍で、歪み率が接近しています。
1.5k | 2k | 3k | 3.5k | 4k | 5k | |
総合歪み | 0.199 | 0.137 | 0.046 | 0.017 | 0.031 | 0.088 |
上側電流歪み | 0.043 | 0.063 | 0.2 | 0.25 | 0.3 | 0.38 |
下側電流歪み | 0.33 | 0.38 | 0.53 | 0.63 | 0.73 | 0.95 |
さらにRkを大きくしてゆくと、下側歪が増大するため総合歪み率は悪化してゆきます。
というわけで、この方法で算出したRkは単なる交流電流がバランスする値で
あると考えるのが正しく、実際の歪み最小ポイントは実測で決めるべきでしょう。
参考
歪み最小ポイントでは、上下の交流電流をそれぞれ
Iu, Id
歪み率をTHDu , THDd としたとき、
Iu * THDu = Id * THDd
となっているようである。
じつに面白いが、THDu, THDdは解析的に簡単には記述できないので、これからはRkの解析式は出せない。