SRPP実証回路2
三極管特性の場合も設計法はすでに確立しています。
これでどうなっているか見てみましょう。
上下の出力電流は揃っており、
伝達特性は対称にクロスします。
合成するとこうなります。元々直線性が良かったので、ぱっとしません。
電流を合わせた結果、出力インピーダンスがアンバランスになっているようです。
下側
上側
合成出力
合成しても、典型的な対称合成とは程遠い姿です。
しかし動作電流は0.7mAですから、拡大してみるとなんとか対称な部分に収まっています。
よく見るとマイナス側が少し詰まっています。負荷抵抗を小さくすると動作電圧の範囲が
狭まります。
ゲイン 約58
式とは若干合致しませんが、式に近い結果を得るには線形近似シミュレーションを
行います。
結論 三極管特性のSRPPの場合は合成の対称性は認められない。動作範囲では上側が出力インピーダンス
低下に寄与し、下側がゲインに寄与している。そしてその範囲では歪みの少ないシングルのような特性
に見える。
実測データ
V−FETのK79を用います。
三角波
サイン波 入力電圧0.013V
三角波
入力電圧 0.013V
歪みは十分改善されていました。
R=200Ωとしました。
負荷680Ωでは若干厳しいので、4.7kΩで測定しました。
R=145Ω (2次歪み最小のとき)
出力インピーダンス測定
Single Zo=859Ω
SRPP Zo=270Ω
このように3分の1くらいになることが多いようです。上側が一人分以上の働きをしている
のでしょう。
gm、rpの簡易計算
線形シミュレータを使えばK79でもかなり正確にZoが計算できます。
歪み最小ポイントは、必ずしも設計法のRではないことを示します。
負荷4.7kΩ
出力 0.43V
歪みがノイズフロアに入りました。設計法では450Ωが推奨。
負荷 680Ω
出力 0.35V
このへんで最小になります。設計法では107Ωが推奨。
そろそろ核心にはいってゆきます。
このようにして上下素子のドレイン、ソース間を流れる電流を見ます。
自分が電流を出力するだけでなく、電流も流れ込みますが、それらは一体となり
Vgsに反映されます。そのふるまいは、ある規則にもとづいているだけです。
まず、負荷を高抵抗にすると上側の動作が縛られる現象。200Ω、200Ωで見ています。
合成過程 R=165Ω
上側の電流は、Rの値により一回位相が反転します。
R=165Ωで歪が最小になることに注意してください。Rの値が大きくなることによって、電流が同相から反転に
転じ、ある大きさになると歪が打ち消されるということを示しています。
これを理論的に式で示した例はどこにも存在しません。
そうである限り、理論的に設計するのは不可能で、当分の間は実際の歪みを見ながらRを決定する時代が続くでしょう。
2004.2.23
(終わり)