SRPP実証回路

  電流合成が直感的にわかる人なら、ある程度対称合成になっていることは理解できているはずです。
ここではそれがどのくらい正確かを検証してみます。



   C1を入れて、K117のgmを全部使うことにする。gm=10mSくらいと思われるが、R3の値を
1/gmにすればACバランスがとれる。出力電位が中点にくれば、DCバランスがとれている。
DCバランスは出力をCでカットすれば考慮しないですむ。

  R3を調整すればどこかにACバランスがとれるポイントがあるはずである。

  計測に先立ってそのポイントに設定しておく。(実際はリアルタイムで2次歪みの最小ポイントに
  設定した。)




上側定電流、下側シングル動作のとき




  R5に現われる電圧(サイン波入力)



  SRPP


  このようにゲインはほぼ2倍になり、2次歪みはかなり減少する。(16dBの改善)
  差動ではノイズレベルにまで低減できたから、それと比べると対称合成度は低い。


出力インピーダンスの検討

  どうなっているのかは、シミュレーターを使わなければ到底わかりません。

  まずgmが10mSのFETを選びます。



  抵抗を100Ωにすれば、このように対称にクロスします。このとき、上側はすでに
S字カーブになっています。




  合成出力


  だいたいS字ですが、わりと歪んでいます。


  実回路で見たのはノードAの電圧波形です。



  ゲイン  黄 シングル 緑 SRPP


  出力インピーダンス



  それぞれ見てみると、

シングル


  SRPP


  半分にはわずかに届きませんが、約半分です(測り方で変わります)。

   またシングルではマイナス側でつまっていますが、SRPPにして対称性が改善したのがわかります。

  シングルから対称合成への特性変化を多く見てきましたが、これはあきらかにその特徴を備えており
  コンプリの非対称も考えると、それほど遜色はないと思います。


まとめ

  理想的な場合です。

  対称合成(SEPPなど)



  差動



  SRPP



  これらが頭に思い浮かべばOKです。理論的にはSRPPは厳密な対称にはできません。



SRPPについて言えること

  対称合成で確かに2次歪みは減るが、少しシングルの味がでるだろう。

  動作点付近では出力インピーダンスはシングルの半分になるが、端っこ
  では怪しい。まそれはSEPPでも怪しいわけであるが。

  等価回路で近似計算すれば、SEPPと同じという結果がでるのでは?


  SRPPのメリット

  差動にするのは、負電源、定電流回路が必要だし、gmも2分の1になる。

  SEPPにするには反転回路、ドライブ回路などが必要になる。

  SRPPは抵抗1本でOK。

  シングルカソフォロは歪がそのまま出るので論外。


  実測データ


  lowerとupperが反対のようですが、これはupperのゲインが大きかったからです。

  直線化しているのがよくわかります。


補足事項


  等価回路でgmと置いたりするのは、動作点付近での振る舞いを定量的に見ているだけですから、
非対称性を見たり、全体をつかむことは到底不可能です。