スピーカーの歪みを観察する
サイン波スイープを観察すると、高調波が現れているのに気づきます。これは何でしょうか。
一般的には2次歪みは対称性の悪さのため、3次歪みは上下がつぶれてできているのだと考える
のが普通です。これが寄生分割振動なのかどうかは確認は難しく今後の課題です。
分割振動領域の歪みは、たとえば5kHzサイン波で発生している15kHzの信号の大きさを調
べればわかります。
だいたい−20dBの基音信号に対して発生しているわけですから、0.56%(−45dB)の歪み率
です。
分割振動領域の歪みは2ウェイでは大変小さくなっています。またDDスピーカーのような分割振動
をしないフルレンジでも歪みは小さくなっています。つまりピストンモーションだと出にくい性質のもので
あることがわかります。
あとは1kHz以上で発生する3次歪みの周波数特性が、分割振動領域の周波数特性と同じである
合理的な説明がつけば良いのですが。
基準信号で音圧を揃えます。
このようにスイープ信号の前方に高調波が表示されますから、これを編集して集めると
高調波のスペクトルが得られます。注意すべきことは高調波はその周波数で発生している
わけではないということです。メーカー発表の歪みの図とはその点で異なっています。
2次歪が驚くほど少ない。
参考 完全アンプでドライブ
スピーカーで発生する3次歪みに加えてアンプで発生する2次歪みが加えられまする。これが面白い
効果をもたらすのです。
3次歪しか発生しないアンプでFE103を鳴らしても音は悪くなるだけです。
FE83E
FE83Eの使いこなしで注意しなければならないのはこのように低域での歪がかなり
大きいことです。おそらく振幅の与えすぎでしょう。
10cmになるとかなり緩和され20cmになると余裕十分になります。
負性インピーダンスアンプで若干改善されます。
高域もFE103のほうが歪が少なく素直な特性です。それにしても兄弟のような特性
ですね。
FE83は気をつけないと盛大に発生する低域の歪み、Qの高さによるぼんつき、つやつやつやつや
する高域が特徴です。これらはフルレンジを長くやっている人は経験上知っていることです。
S−ST7(パイオニア製市販2ウェイ)
低能率タイプのためかやや入力オーバーぎみです。
2WAYでは高域の歪みがとても少ないことがわかります。
pioneer
8cm(S−ST7と同じユニット)
自作のほうがこのへんでは歪みが全然少ない感じですが、少し上のほうで歪が出ています。
負性インピーダンスアンプで改善してみます。
分割振動の高域はこのようになっています。これはFEシリーズとくらべると聴感ではすこし
物足りなく感じます。
W3−315D
8cmにしては極めて低歪み。
メタルコーンは上のほうでも2次歪が少なくなっています。11kHzのピークは内部損失が少ない
ためでこれはどうしようもありません。
W3-582SB(ポリプロピレン コーン)
このユニットは低ひずみのはずですが、ダクトチューニングが低いため歪みは普通になっています。
密閉に近い歪みと考えられます。
高域は華やかさがなくややおとなしく感じる。
Victor DD speaker
フルレンジなのに、歪みが少ないようです。分割振動していないからでしょうか。
構造上ピークが一つ出ているようです。
自作2ウェイ
ツイータが優秀なためか、高域の歪が極小です。聴感でもまさにそのとおり。
MFB-20F
絶大な2次歪み抑制力です。
高域は普通の分割振動です。FEシリーズとくらべ素直で聴きやすい高域です。
メカニカル2ウェイのFF85Kです。センターキャップを強制的に切り離して振動させる方式です。
歪みはフルレンジにしては異例に少ないようです。
低域ですこし2次歪みが発生しています。
伊集院いいですね。
ヘッドホン
耳が痛くなるくらいの音量には絶対にしないので、レベルはこのくらいで見ます。ヘッドホンは
分割振動のないフルレンジと考えても良さそうです。
歪みはノイズレベル以下です。
低域は2次歪みだけです。
参考資料
海外有名メーカーのカタログから調べた口径による歪み率の違いです。
SCANSPEAK 13M/4535R(12cm)
SCANSPEAK 18W/8543(17cm)
振幅にとても弱いことがわかります。電磁制動でこれを抑えるのは難しいかもしれません。