Fostex BC10による高級フルレンジシステムの製作


 製作開始2000年4月23日  

  かねてから計画していた密閉型フルレンジシステムを製作することにしました。
Fostex BC10は10cmフルレンジながら、ダイカストフレーム、アルニコマグネット、
7Nボイスコイル、バイオセルロースコーンと超高級仕様です。(残念ながら今では
新規入手不可能です。)






  箱はいいものをつくりたいのですが、候補としては入江順一郎氏設計のレオという
手ごろな箱があります。オール米松集成材のコンパクトな設計ですが、バッフル幅15
cmということは、ヨーロピアン2ウェイとあまり違わない幅です。

  そこで今回は簡易ユニウェーブの箱をリフォームすることにしました。この箱はヨーロ
ピアン2ウェイと同じ箱で、穴がひとつとフルレンジに好適です。


  この簡易ユニウェーブも作ってから二年、いろいろテストしてみてごく普通のスピーカーで
あるという結論です。ブレッドアンドバターシステムに化けるには木の普請では剛性が不足の
ようです。

  まずフェルトをはがしユニットをとりはずします。今回はいきなりRつけのかんながけから
始まります。半年間バイオリンを作っていたので、木を削るのは抵抗がありません。

  そのあとサンダーで塗装をはがしにかかります。木の肌が出てきていい感じになってきまし
た。しかしなかなか完全に着色ニスがとれてくれません。サンディングシーラーを塗らずにその
ままニス塗りしたためでしょうか。木に染み込んでいるようです。少し残してマホガニー調に塗ろ
うかと考慮中です(今はケヤキ色)。


  BC10を穴にあてはめてみると穴がやや小さいようです。まずトリマーの刃を最長にして、
穴の内側をけずります。ユニットをあてはめてみるとネジ穴は一致していました。

  このBC10のフレームにはテーパーがついていて、ザグリがなくともまあまあの見映えになる
ようになっています。実際に眺めてみるとやはり格好悪いので、ザグリをいれることにしました。

  トリマーの刃長を3mmにして、ザグリ部を削ってゆきます。フリーハンドできれいな曲線をだす
のは難しいので、1mmくらい残してあとは ほたてくん で整えるようにしました。




   今回ほたてくんを作る必要が生じたので、以前から考えていたトリマーを使って丸穴をあける
方法を試してみました。次回作のFE108Sが開口穴104mmなので、半径52mmとしました。

 方法




 図のようにトリマーのガイド板に4mmの中心穴をあける。ここを木ネジで固定して回転させる
のである。

  テスト用の板でやったところうまくできました。中板はもちろんほたてくんとして使用しました。







木口の処理は2mm檜板を張るのが常套手段なのですが、組む前に張っておかないととても
めんどうです。今回はどうしようかと思いましたが、いろいろ考えてみるとトリマーを使えば簡単
です。木口部を1.8mmくらいの深さで削って檜板を貼り、あとでかんなで平らにすればOKです。


 さてここで月刊Stereoに掲載された入江順一郎氏の箱をふりかえってみましょう。




  このようにとてもリーズナブルでシンプルな箱だと思います。木口を隠しさえすればとても見映え
のよい箱になります。

  これらの欠点としては、大きなRをつけにくいことだと思います。その場合は前面肉厚バッフル
方式を採用することになります。





  バッフルの強度の点ではしっかりと固定されている入江氏の方法が優れていると思います。



   今回は早くも楽しい塗装にはいります。(最初からやるとここまでが長くて大変です。)
最初は試しにメイプルを塗ってみました。明るい色がさわやかで木目もよくでています。ただ
今回は地肌に難があるので断念し、用意しておいたこげ茶のカシューをすこし薄めて塗って
みました。これは素晴らしくいい質感です。すこし紫がかってとても落ち着いた色がでています。
木目はでませんが、高級感があります。






  前回裏板のネジ穴をあけるとき、表面のシナを破壊していて格好が悪くなっていました。
ドリルの出口は要注意なのです。そこで今回はその部分をトリマーで削り、檜板を貼る事に
しました。





  ターミナル板の部分もザグリをいれるべきですが、今回はやめておきました。



   今でも手に入る限定ユニットとしては、6N−FE88ES、SX−100などが面白いと
思います。E.J.Jordan氏がAXIOM80を超える20cmユニットを開発中という話も
あります。(高いだろうなあ)


  さてそうこうしている内にいよいよ完成しました。塗りすぎの弊害もあることがわかったので、
3回塗りにとどめました。裏板は黒色カシューの2回塗りです。薄く横方向に塗って行くと乾いた
とき鏡面っぽくなってくれることがわかりました。




 ターミナルはトリテックの高級感のあるもので、吸音材はミクロンウールを下部に少量
いれました。





  早速家に有るヤマハのアンプにつないで試聴してみました。ボイスコイルを飛ばしてはいけ
ないので、つなぐのは市販アンプか真空管アンプになるでしょう。

  本日BSでやっていたアンネゾフィームターの演奏を流してみると、大変宜しい結果を得ま
した。またポピュラーにも適合するようです。

(2000年5月5日完成)



周波数特性の測定

   マイク Sony ECM707
   Sound Blaster Audio PCI 64D マイク入力SN比>65dB

   信号 Sheffield A2TB Test Disc 正弦波スイープ信号 20-20kHz

   ソフトウェア  WaveSpectra Ver.1.11 
   測定距離 約60cm ほぼ正面
   基準信号なし
  
  青:ピークホールドをかけてスイープ   赤:バックグラウンド

   今回は暗騒音が大のため低域が読み取れません。



  BC10 密閉箱
   



  聴感ではFE103にくらべややキンキンするようですが、ソースによってはクールな
切れ込みで差をつけます。


  バスレフによる広帯域化

密閉箱のインピーダンス特性


  この箱に穴を開けてバスレフにします。バッフル厚は18mmなので、穴だけ
でfdはかなり低くなるはずです。例によって直径3cmの丸穴とします。

ダクト長18mm


  fd=75Hzくらいになります。

  Qo=0.42

  Q=0.57



  周波数特性は出たとこ勝負なので、あまりいじることは
しません。

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