二代目空氣忍者 (Tangband 8cm 紙コーン
W3-593SD)
空氣忍者をリフォーム中
小型スピーカーで豊かな低音を実現するという長岡鉄男以来の永遠のテーマは、バスレフ+ASTで
実現できると長い間思っていました。
しかし堅いことを言わなければ、ゴムエッジ+バスレフで意外や意外いままで聴いたことも無いような
豊かな低音が鳴り響くので、この作品を以て
二代目空氣忍者を襲名することと致しました。
解説
容積1.4L ダクト直径1.5cm 長さ10cm
一見してメタルコーンのようですが、これは紙コーンです。fdを下げるために、直径1.5cm、
長さ10cmの木製ダクトを接着しました。
つまりこれは今までにない低fdのスピーカーなのです。
エッジにはReed
Rubber & Foam Products社のSantopreneとういうゴム素材が採用されています。
音量を上げても全然いやな音がしないので、小型システムとは思えない鳴り方です。
二代目空氣忍者 例によってザグリは外観上必須。トリマーとほたてくんを使用。
資料
表はW3-593Sですが、今回のユニットはW3-592SD。つまりダイキャストフレーム仕様です。
W3-592SDの詳しいデータは不明です。
18W/8546 | W3-315D | W3-593S (paper cone) |
W11CY-001 | W14CY-001 | W17E-002 | CA11RCY | |
Qts | 0.21 | 0.52 | 0.79 | 0.34 | 0.36 | 0.32 | 0.3 |
Vas (L) | 70 | 1.7 | 1.3 | 3.7 | 10.6 | 29.5 | 4.6 |
Fs (Hz) | 25 | 105 | 100 118 | 65 | 43 | 34 | 53 |
Re (Ω) | 5.5 | 6.6 | 6.6 7.3 | 5.7 | 5.4 | 6.4 | 5.5 |
Le (mH) | 0.4 | 0.2034 | 0.3165 | 0.32mH | 0.37mH | 0.4mH | 0.65 |
Xmax (m) | 6.5/10 | 1mm | 0.4mm | 6/9mm | 8/14 | 8/19 | 6/9 |
Z (Ω) | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 |
Qms | 2.91 | 5.51 | 7.76 5.5 | 1.79 | 1.80 | 2.4 | 2.1 |
Qes | 0.23 | 0.57 | 0.88 | 0.42 | 0.44 | 0.37 | 0.35 |
SPL dB/W(m) | 89 | 87 | 86 | 86 | 87 | 87 | 85 |
Pe (W) | |||||||
BL | 8.3 | 3.89 | 3.3 | 5.6 | 5.8 | 7.8 | 6.0 |
dia (m) | |||||||
Sd (m^2) | 50 | 75 | 126 | 50 | |||
mo (g) | 18.5 | 2 | 1.96 | 5.5 | 9.6 | 15.5 | 6.8 |
no (%) | |||||||
Rp (Ω) | 67 | 70.3552 | 64.5693 | 32 | 31 | 42 (42.8) | 35.3 |
frequency response | 105-20k | 100-20kHz | |||||
Zo (Ω) at Qtc=0.56 |
ユニット測定
ハイインピーダンススイープ
fo=129Hz
Qms=5.5
fs付近の精度を考えると、実際のQmsはもっと大きいかもしれません。
電磁制動スイープ
Qts=0.6
負性インピーダンスアンプを使うと、0.4くらいに下がります。
Vasを求める
129Hz −−> 161Hz
Vas=0.78L
これは低めに出てしまいましたが、このユニットではイコライザーのところから空気漏れがあるので
これが正しいとは言えません。
密閉でピークを見る
170Hzでふくらみが変化しているのがわかります。このようなQの変化はどのようなシステムでも
必ず起こっていますから、これが見れないような測定法は駄目なのです。
密閉箱では空気バネの非線形性による歪みが現われています。その歪みは
電流正帰還で改善されています。
箱を調べる
Z=0Ω
Zo=-3Ω
周波数特性を見る
実際の試聴では低域が足りないという感じは全然ありません。とても豊かな低音です。
ゴムと布の違いは、バンジージャンプで考えてみれば理解できるのではないでしょうか。
Nearfield response
コサイン波解析
電圧・電流解析
末尾でMFBがかかっているのが観察されます。第一波速度はわずかに低めに出ているはずです。
速度が上がってくると電流はほとんど流れ無くなり、わずかに片方にシフトします。
Voice coil movement after signal cutting off
電流波形を用いると、信号カットオフ後の速度特性をみることができます。これだとfco1におけるQが
わりと正確にわかります。併せて電流正帰還の効き具合も見ます。
白線が信号カットオフ時を示す。電圧と同時記録されているので正確。
パワー崩壊テスト
負性インピーダンスアンプでは安定感があります。電磁制動アンプではよくみると崩壊の仕方に味があるというか、
危うくバランスをとっているなあと思えます。さらに観察すると、思い切り崩壊したあとまた復帰している姿がそこにあり
ます。これがゴムによるコントロールなのでしょう。
負性インピーダンスアンプでは歪みも少なくなっています。
さて、実際にはカブトガニ I のMOSアンプで聴いていますが、このような充実した低音を鳴らすのは
初めてです。ゴムエッジのこのユニットは本当に力強く鳴ります。
LM1875だと高域に味わいがでないので、MOSアンプのほうが向いています。
バスレフの力を100%引き出すのは布エッジでは不可能な気がします。ウレタンエッジは中間的な鳴り方
ですが、この箱で確かめたところやはり音が濁ります。
このスピーカーはやや大味ですが、小型だからといって我慢を強いる部分がないので音量を大きめにして
楽しむと良いでしょう。
参考 布エッジのFE83Eバスレフ
こうして見ると、とても興味深い。
80Hz、100Hzではコーンは激しく異音を発し200Hzになると澄んでくる。−3Ωではやや改善されている。
ダクトは低い周波数でもきれいに発音している。−3Ωではダクト音圧>コーン音圧の傾向が強まる。
布エッジの性質により、ダクトは抑制された鳴り方をし、コーン音圧は歪みやすい。
限界に達してもまろやかに歪む。ゴム動力のエネルギーが高い音圧を生む。