Axiom80の研究



  このスピーカーの奏でる音を他のなんらかの方法を用いて出すことができるのだろうか。

  そのような不可能に近いことでもやってみなくては気がすまないというのもある。

  さてフルレンジにはフルレンジで挑戦してみようと思うが、実は平板スピーカーでも可能性
があるという気はしている。


  FE203ではどうだろうか。当然箱はバックロードである。

  AXIOM80でマウンテンダンスを聴いてみた。繊細感はかなりのもの。ツイーターなしでも
こまかく切れ込む。中域から高域にかけての明瞭さは素晴らしい。FOSTEXの大型フルレンジ
が四苦八苦して高域を出しているのにくらべ、余裕で金属的な輝きまで再現する。しかもFOSTEX
はちょっとピークがあり聴きづらさがあるのだが、そういうこともない。
  
  低域は無いかというとそうでもない。ベースが結構な音圧ででている。しかもそれは、良く見ると
下のARUからではなく、コーンから放射されている。音は少し単調ではあるが、制動感もある。とい
うことは、制動が期待できない真空管アンプよりもサブソニックをカットした半導体アンプが適当とい
うことになるだろうか。

  軽いコーン、強力な磁気回路。ここまではFE203などと共通であるが、FE203ではツイーター
は必要になる。ツイーターをつけたFE203バックロードの音は、AXIOM80と比較すると、中が
すっぽり抜けているように聴こえる。それはそれで聴きやすいし、ど迫力の音が出せるという良さも
あるが、結局は似たようなフルレンジシステムでも両者はかなり違うのだ。

 その違いの理由はは量産向きの妥協したFOSTEXの布エッジとダンパーに対し、AXIOMではエッジ
レス、宙吊りダンパーという凝った仕組みが採用されているからだろうと思う。まあそれは良く言及されて
いる事柄だが。

  PIONEERにもエッジレスユニットはあるが、ダブルダンパーである。やはり初動感度の高い
大型フルレンジはそうそう無いものなのである。



  冒頭で述べたようにジャズでも聴けるということだが、本領を発揮するジャンルはなんといっても
少人数のコーラス、ソロ楽器、現代音楽などなど。編成は小さいほうが得意だが、ストラビンスキー
の兵士の物語くらいまでは大丈夫である。


   では何らかの小型フルレンジを用いて同等のサウンドを得ることはできるのだろうか。
いろいろ考えた末、究極の試みとして、FE83E密閉箱を負性インピーダンスMOS−FETアンプで
ドライブし、ヤマハASTサブウーハーを加えたものを試した。

  AXIOM80と詳細に比較してみた。

  FE83では、音の伸び、しなやかさが特徴で、小型システム独特の音場感があり、低音はやや
どろどろして出てくる。

  AXIOM80では、ほとんど全部の帯域の音がコーンから放射され、そのにごりはすくない。大型
ユニットらしく音に実体感があり、明るく前に出てくるのが特徴である。FOSTEXのようにつやつや、
かんかんすることは少ない。



  結論としては市販されているようなユニットを用いてAXIOM80のような音を出すことはまず
できないということになると思う。


  AXIOM80の弱点をなくすことができるだろうか。

  AXIOM80のパラメーターを分析して、最適な鳴らし方をする試みはあまりみかけない。
 
 ジョーダン氏の設計した箱にいれ、直熱三極管アンプかマッキントッシュでおそるおそる鳴らす
というのが多いようである。

  低域を補う方法はかなり難しい。バックロードやバスレフには不向きなので、ARUという
セミバスレフのような仕掛けで低音を出すようにしている。

  やはり、TSパラメーターを調べ、箱を自作するという気にはならない。

  コーン直径は24cm、センターキャップは無い。ギャップは狭いらしい。

  カタログではfo=20Hz、実測では30Hzのようだ。飽和しやすいのでQoは計りづらいらしい。

 コーンは軽く、ダンパーは弱く、磁気回路は強力ということから、高くはないであろう。

 音を聴いて、Qがどのくらいなのか推定してみると、音が濁らないことからQは0.4〜0.5のような気も
するが、低音のしまりはそれほどとは感じない。

  やはりうかつには手を出すのは控えよう。


   ARU箱入りインピーダンス特性