FE103講座  

第2部    実地演習  構成組み換えテスト

  FE103を使うとどんなささいな変更でも違いが感じられますからアンプ作りには
欠かせません。ここでは筆者所有のアンプを次から次へと聴いてゆきます。



  FE103Eのエージングが終了した段階で、プリをオールFETプリに、メインアンプをK1056ダイ
レクトカップルにしてしばらく聴いていますが、これが今まで聴いたことがないようないい音で鳴ってい
ます。

  高音がきれいで涼しげ、全体的に静かでクリアー、制動力がある。という特徴がだんだん現れてきて
いまでは、聴くたびに実感できます。

  音をもう完全に覚えたといって良いかと思います。

  FE103Eのスペックをみると22kHzまでとなっています。

  どのへんの要素が効いているのか、調べてみないことにはわかりません。少しづつ昔の構成に戻して
いって確認してみようと思います。

  ゆっくりゆっくりやってゆくと、音楽生活に溶け込んでストレスにはなりません。

プリ メイン スピーカー 音の変化
オールFET完全対称プリ K1056ダイレクトカップル

ポリプロピレンフィルム

FE103E

ペリスコープ

出発点

勿論この状態で聴いても、低域は乾いた感じのよく言えば

歯切れの良い音。決してしっとりした低音ではない。

ODNFプリ

  昔のテストでは、このほうが

クリアー、定位抜群だったはずだが、

結果は?

    これで昔の音にほぼ戻りました。いやに爽やかな高音がしたのは

オールFETプリの仕業だったようです。これはこれで解像度抜群の

普通の音です。シャープでハードと言ってよいでしょう。総合的には

ODNFのほうが上かも。

オールFET完全対称プリ     復帰

爽やかで涼しい音

  J48完全対称パワー

アンプ

  音の密度感が違う。直接音と余韻の分離の仕方が全然違う。

オールFETなのでさらに過激にクール。電源強力なため若干
うるさい感じはある。音場感はこちらのほうが広大でリアル。

いつのまにこんな高度なアンプを作っていたのだろう。

  K405ASTアンプ   この石はFET美人という位置づけですが、さすがに高域はすっきり

綺麗です。ただ言葉で言うのは難しいのですが、パサッという音の

でかたに潤いがない感じがします。

番外編

パイオニア A−01

    高域が綺麗かどうか試すにはいろいろ方法がありますが、最近

はFriends and strangers(Album: Mountain dance より)を聴く

ことが多いです。このアンプはおとなしめですが、とてもきれい

に鳴ります。自作アンプと同等かというと、やはり見通しがやや

悪い、ほこりっぽい、情報量が少ないなどの差はあります。

サンスイ AUα607MOS

 Premium

    情報量が多く、余韻がきれい。聴き所までゆかなくとも冒頭の数秒

でわかる。このアンプの良さをフルに味わうにはフルレンジでなく

てはだめみたい。



     Aiwa CDラジカセを2分くらい聴いてしまったので、耳のバランスがそれに合わせられた

ようです。直後に聴いたFE103Eがかんかんして聴こえました。しかしそれは数分で元に戻ります。


プリ メイン スピーカー 音の特徴
オールFET

完全対称プリ

6BQ5シングル FE103E

ペリスコープ

これがMOS−FETアンプだと言われても、わからないかもしれ

ない。よく似ている。この音量ではノイズの質は聴き取れない。

余韻が極めて短いのが特徴かもしれない。質感は半導体では

到達できないレベル。

  最低域がないのはだんだんわかってくる。音が重なりあう

のは苦手みたい。 

  LM380N電流正帰還

14V電源

  最高域の鮮度、切れ込みはディスクリートに迫っている。仕上がりゲインが

高いためそれによる問題が発生している。電解コンデンサーによる?

もやもや感、音の分離の悪さを感じる。低域カットオフが高いみたい。

  東芝

TA7240電流正帰還

  三重拡散のよく出来たデイスクリートアンプみたいな音。しっとりとして

輪郭明確な音。電解コンデンサーによるくせは少し感じる。

  ヤマハYST−M15   切れ込み、力感などは三者のなかで一番優秀。聴き所ではとても良いが

他の部分で色づけは感じる。

  モトローラ2N3055/MJ2955DCアンプ   切れ込みすぎず、低域しまりよく音楽的なアンプ。遠くの音までよく分解

する。もちろんこのくらいのアンプなら日常使用で不満はない。

  右D1882SC2987/A1227

オムニバス

  オムニバス形式の比較は、ソースの左右信号の違い、スピーカーの左右差

の問題がつきまといますが、差を感じた場合音楽の進行とともにその差を

感じ続けますから、前者のほうは問題ないと思います。スピーカーの差を

留意しつつ比較すれば大丈夫です。この方法が一番小さい差まで検出

できる方法です。

 右のほうが前に張り出す少しきつい音、左は歪が少なく奥深い感じ。

完全対称は歪みを少なくするのが難しいか。

 エピタキシャルは前に張り出す明るい音が特徴です。どちらもその性格

は備えているようです。

 右のアンプの音が輝かしく、余韻の長いこと・・・。メタルキャンの御利益?

 UΣ?

  サンケン2SC1116/A747

三重拡散メサ

  三重拡散上品なのです。音の消え行くさまが美しい。このようにセラミックC

で化粧するとなんと魅惑的なことか。

  サンケン2SC2921/A1215

エピタキシャル プレーナ

  高域ばかり注目しているが、これは低域もなかなか良い。高域も線が細く

なく、豊穣。MOSとそんなに似ていないが、これがバイポーラの到達点である

かも知れない。

  2SK1529 2SJ200    これだ。もはやMOS−FETとバイポーラを間違うことはないといえる。透明

な空間に拡がる音の微粒子。聴き所における清澄感。真空管と比べると

無色透明で余計なものが無い。その無色透明以外のものを求めるとき真空管

の道へ進むのだろう。

 

オールFET

完全対称プリ

KT88シングル FE103E

ペリスコープ

聴き所の音色、リアルさは絶賛ものだが、音が絶え間なく揺らいでいるのが

聴こえる。心地よいゆらぎではなく性急なゆらぎなので気になる。とくに低レ

ベルのところではっきりする。6BQ5では気づかなかったが、これは致命的

な欠点かもしれない。ここは一度定電流化実験を行って症状が消えるか

見る必要あり。

  完全アンプクラシック   ゲルマニウムの音を今あらためて聴いてみると、折り目正しく端正な音で

す。透明度もスピード感も十分あり、耐久度があれば実用になるでしょう。

4ペアのうち1ペアはすでにお亡くなりになりました。

  バイポーラのアンプがFETのように音がぱっと拡がらないのは、スピーカー

にまとわりつく成分が多いためと思います。

  完全アンプエクストリーム    初段V−FET差動で生ずるリプル音さえなければ、この生き生きとした情報量

あふれる音は完全アンプのスタンダードとなったでしょう。

 終段ベース電位はあまり動かないので、全体が巨大なV-FETとして働いて

いるわけではありません。

  完全アンプODNF   スピーカーとスピーカーの間に像が現れる。左右のスピーカーの位置に高音

楽器の像が現れる。音はタイトでソリッド。あいまいなところがない。

  ODNFパワーアンプ   スピーカーとスピーカーの間に像を結ぶ。これは間違いない。

音色はコンベンショナルなアンプと変わらない。出来る音像でアンプが指摘できる

という珍しい例です。

  FETドライブバイポーラ完全対称   これはエミッタ抵抗をなくした実験アンプ。細かい音が出て、華やかな感じ。

バイポーラのくせは、音色、音場感に現れる。この華やかな感じが好きな人は

常用アンプとして使える。私はというとこの音は嫌いではない。

  V−FETアンプ   冒頭の鈴が上のほうで鳴るという、隔絶した世界。音場感はODNFとNFBの

中間位。こちらのほうがまんべんなく拡がる。

  音のひとつひとつが宝石のように美しい。

  V−FETアンプ電流正帰還    余韻がつぎのフレーズに重なったまま減衰してゆくさまが見える。全く影響をうける

ことなく。

 非直線性を補正することなく信号を処理しているこのアンプでこそなしえる

再生上の奇跡。



オールFET

完全対称プリ

MOS−FETシングル FE103E

ペリスコープ

 この低出力アンプも0.1Wくらいで使うと真価が発揮される。プッシュプルよりさらに

細かく分解し、くせが少ないが、最終的にはMOS−FETのくせというものが残って

しまっている。

 それは結構大きい。

  UHC−MOSシングル   gmの大きいUHC−MOSがいろいろな問題を解決している。音が柔らかく、粘度が感じ

られない。余韻の伸びがV−FETのそれに近い。伝達特性の直線に近い部分を使って

いるからでしょう。

  UHC−MOSプッシュプル   粘度のないさわやかな音。ずしんとくる低音。UHC−MOSで電流正帰還をかけたもの

はおそらく世界でこの一台だけでしょう。

 アンプの未来を拓く可能性を感じます。


  アンプのテストは大音量で差を見るという方法も有力ですが、それは拡大して細部を見ると同時に
どのくらいで破綻するかも見ることになります。

  FE103を用いるこの方法は、破綻しない範囲での音質チェックとして有力なものです。

  完全アンプと完全アンプIIIはまたいずれ。