カセットのダイナミックレンジ
準備
CDのダイナミックレンジはどのくらいなのだろう。CDの出たての頃は買ってきたディスクに技術解説があり、
90dB以上と書いてあった。(オーケストラは100dBであるとの記述もある。)今はどうなっているのか。ネットで
調べてもCD90dB以上、SACD120dBとなっているのが多い。
しかしこれを見るとCDは120dBあるのではないかと思える(??)。
これが用意したテスト信号。
この系列信号を使ってカセットの録音再生システムを調べる。(内蔵ヘッドホンアンプ出力39Ω負荷)
今回はヘッドホンで聴いているときを想定しているが、ラインアウトより若干特性は悪いはず。
歪率1%のレベルを直線補間で算出し、10kHz付近のノイズレベルを10個とり平均したものとの差をダイナミックレンジとした。
ノーマルポジションのPS1でみると、94.4−12.9=81.5dBということになる。
メタルテープの場合。
95.9−13.2=82.7dB
メタルが少し良い。メタルは歪みの少なさというよりもどこまでも伸びてゆく高出力にメリットがあるのでこの比較では
少々不利かも。
楽音をよく観察すると1kHzよりは315Hzのほうが若干ピークのレベルが高い。それにこの辺は3%歪んでいても
心地よく感じるはず。315HzのMOLでダイナミックレンジを見るのは合理性がある。
歪み率が3%になる出力レベルを直線補間で算出し、図のAにおける10kHz周辺のノイズレベルを10回平均し両者の差をとったものを
ダイナミックレンジとした。
参考 直線補間の方法
この数値を下の表計算ソフトにコピー&ペーストする。
My1だとダイナミックレンジは78.1dBとなった。他も保存Wavデータから計算した。
MOLにノイズレベルが加味されたものになっている。やはりノイズの少ないハイポジションが上位にくる。
「85dB?CDが90dBならすごいじゃないか。」と考えてはいけない。
ここで見たことを信じるならば、120dBを85dBの器に入れるのだと考えなければいけない。実際そのくらい
な気もする。あるいは85〜80dBにコンパクト化できるのだとプラスに考えても良い。テープメディアはとても優秀な
コンプレッサーでもある。
補足
最初のフルビット信号のノイズレベルを測定しておいた。(10回平均)
プリ出力では10dB程度劣化する。(−0.1dBまで上げないのは測定系で歪むため。)
パワーアンプ出力でさらに3dB劣化した。
結局家の環境ではCDのダイナミックレンジは107dBということになるのか。それともノイズフロアがこのままで12.5W
まで出せるとして、出力100倍→電圧10倍→20dB、ということで122.5dBが実現することになるのか?後者はまだ確信が持て
ない。
あ、そうか出力を上げてゆくとCDプレーヤーのノイズがでてくるのでどこかで頭打ちになるはず。
ともあれわが家の測定環境では103dBまでは直接観測が可能なのでカセットの研究には十二分である。
各社のカセットデッキの仕様を見るとSN比は横並びに60dBとなっている。60dB!ずいぶん控えめな数値と
思うが、元々ダイナミックレンジとSN比とは違った概念だ。またここでいうダイナミックレンジについてはさらに
実質的なものを考慮したものになっている。
例えば録音レベルの上限を315Hzの歪率で規定し、ノイズレベルを耳につく4k〜12kHz付近で測定して
いる。勿論10kHzではダイナミックレンジは狭いはずだが、音楽信号のスペクトルはかまぼこ型なのでこのあたりでも
だいたい歪まないレベルにおさまることを見越してあるのである。