超広帯域電圧増幅段MOS FET パワーアンプ  

終段ドライブ用にHEMTを採用したものを試作する。回路はこのようになる。






去年作って失敗したアンプの基板を流用する。



二段目以降を取り除いてリニューアルする。



直流メカの状態でプラス側のHEMTが電源投入時に壊れてしまった。ゲートとソースがショートしていた。
電源のエネルギーが大きいので過渡的に耐圧オーバーするのだろう。事故が怖いので今度はft 6.5GHz
のバイポーラ2SC3011で試作する。耐圧は20Vあるので十分である。



 

引き続き実験を行う。ドライバー段にはft 6.5GHzのバイポーラトランジスタ2SC3011を試してみる。耐圧は
20Vあるので安全だと思う。

回路図と基板図





電圧増幅段の動作を確認したところ。



パワーアンプ の動作を確認したところ。



特性を調べてみると出力2W、各種高調波歪みが多いという結果となった。写真ではアイドリング6mAだが、
35mAまで増やしても特性は改善しなかった。電圧増幅段のみを1.2kΩ負荷で調べると出力0.2Vで歪みが
たくさん出る事がわかったので理由はわからないがこの電圧増幅段は使えない。


超広帯域ではないが2SC2240はイコライザーアンプの初段に使えるくらいローノイズであるという。




ft は100MHzである。試しに2SC3011と置き換えてみた。調整はできてプリアンプ部の特性も取れた。








なかなか良好な特性になっている。将来これでプリアンプも作ってみたい。パワーアンプの方は
トラブルがあって現在難航中である。



パワーアンプのトラブルの概要を書くと、例えばこのような回路と基板で出力の低下と歪みの増加が
出現するのである。




C2240の時のパワーアンプの特性はこのようになる。







前作の Dualgate MOS 電圧増幅段MOS FETパワーアンプの特性を見ると、


となるのでどこかに問題があると思われる。気になるのは電源オフでも測定信号が通る現象がある事だ。
この現象はパワーFETを繋いだ時に現れる。目視と実験を繰り返しても原因特定には至らなかったので、
これはプリアンプ専用にしてパワー用にもう一つ基板を作ることにする。


C3011で再度試したところプリアンプとして成立することがわかった。














特性



これはやや悪いがTASCAM US144ーMkIIで計測すればノイズフロアが10dBくらい 良くなるはずである。


完成写真







しばらくこれを聴いてから改めてパワーアンプ基板を製作する。



ドライバー段の電流の挙動を見ていると、HEMTなどはやっぱり無理な気がする。C3011が今のところ有望である。
プリアンプの音もいい。FETとは違った味わいがある。

今回はK1056、J160を終段に使ったアンプの基板部分を新たに作る。








部品は揃っているのでどんどん進むと思う。回路図と基板図はこれから書いて行く。



回路図と基板図を示す。






電源周りを配線した。









C3011よりドライバー段に適している石を見つけたので採用してみる。コレクタ電流が80mAまで流せる。
ft は7GHzである。




手持ちの全部のK30Aをペアマッチングすると36ペア取れた。K30Aについてはこれを使い切ったら終わりである。

初段のテスト




ほぼ1mA流れている。


ツェナーダイオードの電圧をチェックする。2mA流しているがツェナーによっては4mA流さないと電圧が出ないのもある。




二段目の電流チェック



C5086を取り付けてエミッタ電流をみる。




ここまではうまく行っている。


位相補正してNFBをかけたところ。オフセット3.1mA、アイドリング 4.1mAである。安定している。



電圧増幅段の特性を調べる。



いつもより歪みが多い気がする。


パワーアンプにして調整する。調整できた





測定結果


パスコンを追加してこの結果だった。回路を見直してみると終段バイアスの抵抗値が低いので15kΩに変更した。


測定結果



ほぼ予想通りの結果が得られた。



基板を完成させて組み上げた。






回路は十分練られたものなので安定度も良い。220Ω抵抗を追加して終段アイドリングを増やしている。



前回測定の特性は出力が取れていなかったが、ミスによりゲイン1になっていたらしい。こちらが本当である。

音を聴いてみると目の覚めるような切れ込み、深い音像がもたらされているのがわかる。まるでHMA9500II のようだ。




連休なので3台の比較試聴を行った。ソース機器はパイオニア Nー50A、スピーカはFE103SOLバスレフである。



出来たばかりの超広帯域電圧増幅段K1056 J160 DCアンプを鳴らす。なんとも素晴らしい。低域はガツンと明確に出て、
高域は最高レベル。パートのコントラストがクッキリ浮かび上がり、魔術的に上手くいったミックスダウンのように聴こえる。




ドライバー段が東芝のDualgate MOSで出力段がK176 J48 のDCアンプである。つなぎ替えた直後はちょっと
色付けを感じたが、高域の柔らかさ繊細さは十分対抗できるものがある。オールFETアンプなので低域の
力感はそれほどでもない。



金田式の回路と部品で作ったDCアンプである。高域はよく伸びていてFETらしさがある。そのかわり低域は
平凡で力感、量感が感じられない。

色々な回路を試行して来たがついに小型プリメインアンプの正解を見つけた感じがする。


最終回路  2022.9.18