SONY TA-4650点検日記
某月某日 終段石を取り外して眠っていたTAー4650を復活させるために総力を挙げて取り組むことにした。取り外す前
はちゃんと音が出ていたが時折ガサガサというノイズがのる状態だった。その後K60をいくつか入手できたため元に戻
そうとやってみたらうまくいかなかったので今まで眠っていたのである。SITアンプについてかなり経験を積んだ今回は
出来そうな気がしている。
メインアンプの回路図 保護回路など一部省略している。
このように入力、出力、電源のコネクターがあるので基板の取り外しができる。なぜか入力はコネクターでなく半田付けだった。
初段の電流を見ている。0.37mAくらいか。
電圧増幅段のオフセットを見ている。やや大きい感じがする。
終段のバイアス電圧を見ると深さは十分だがアンバランスなのが気になる。
手持ちの終段石を繋いでみる。オフセットが105mV、アイドリングは調整して100mAくらいにした。オフセットが大きいが正常動作
しているのでちょと安堵した。
某月某日 動作が確認できたLchのオフセットが大きいので終段石のペアをあと2組あるので差し替えて見た。100mV、300mV
といずれも大きい。このアンプには調整箇所が無いのでどうするかは大きな課題である。
次にRchで動作するか見た。アイドリングの挙動がおかしいので(トランジスタ一石の保護回路が作動しているらしい)、アイドリング
をVRで調整しているとK60が昇天してしまった。
このタイプの保護回路は断続を繰り返しているうちに終段が壊れる事故が多いのだという。話には聞いていたがやってしまった。
保護回路については今後の課題である。その前に何故調整できないのか原因を調べて行くことになる。
参考 本機の保護回路
某月某日
電圧増幅段の動作テストをした。回路図を見るとわかるように、終段石を外した状態で電圧増幅段が独立したNFB
アンプとして動作する。
Rchで行った。
Rchは失敗した方だが電圧増幅段は全然問題ない。Lchはやってみると出力電圧がふらふらしている。
某月某日 Lchのこの部分のケミコンを新品に交換した。
Rchはすでに交換している。
バイアスを見るとバランスが取れている。
何故かオフセットも改善している。
一晩つけっぱなしにしたら100mVくらいになっていたが、出力段をつければ何とかなりそうだ。
某月某日 Lchに出力段を装着し、アイドリングを調整、特性を調べた。
大出力が得られている。負荷抵抗は実測で8.4Ωだったから間違いではないだろう。
測定後再起動した時に石が飛んだ感じのトラブルがあったが翌日調べてみるとK60は幸い無事だった。
某月某日 VーFETの伝達特性を調べるための基板を作る。この計算表に基いて抵抗値を決定する。
15V電源、330Ωと2kのVRで良さそうである。このような回路になる。
-14.5V?-9.2Vの間にバイアスを設定できる。
K60
伝達特性の測定ばかりでなく石の生死も判定できる。先ほどの事故の時の石はソースに抵抗を入れて確認したところやはり異常を示した。
UnitedSic社のパワーJーFET、UJ3N065080K3S
伝達特性がよく似ている。K60の代わりとして使っても動作はしそうである。
某月某日
先ほどの基板に部品を付け加えてアンプにしてしまう。K60の代わりにパワーJーFETを使ったアンプである。回路は
SITプッシュプルアンプと全く同じにした。
アイドリングが198mA、オフセットが14.3mVとなっている。
起動が難しいという問題があるが、とりあえず安定に動作することがわかった。特性はこのようにあまり良くない。
某月某日
過電流保護回路をつけてみた。これで調整や実験が安全に行えるだろう。過電流を検知してB1電源がシャットオフされる。
接続前に電圧を確認しておく。
シャットオフしたところ。
バイアス電圧の振る舞いを調べているところ。アンバランスでも和が一定なら時間が経てば正常域になってゆくし、終段を繋げば
圧倒的なオープンゲインで瞬時にバランスするはずだが何だか気持ち悪い。電解コンデンサーを有するACアンプの特徴だろう。
先ほどのアンプにK60を載せて特性を調べた。
ノイズフロアが違うのは測定系のSN比の違いだと思う。単純に比べても純SITアンプの素性の良さがわかる。
マルチメーターの調子がおかしいので新調した。高電圧を示してアラームが鳴るのである。もう一つのマルチメーターはそういう事がないので
おそらく寿命がきたのだと思う。
早速バイアス電圧を調べてみる。
安定しているようだ。変な高電圧が出ない限りこのくらいのアンバランスでビビることはない。そろそろ次のステップに行けそうだ。