2015年の音楽生活8




NHK BS クラシック倶楽部 ペライア ピアノリサイタル ( 2013年サントリーホール)

ほとんどの来日アーティストが眉ツバものとはいえマレイ・ペライアは至芸を見せてくれて
いるなと思う。テレビをつけるとフランス組曲の柔らかいタッチの音が流れてきた。この後
はベートーベンの熱情ソナタだ。ファジル・サイに対抗したプログラムなのか。注目の第二
楽章は終始穏やかで軽やかなものだった。これはこれで悪くないと思う。

インタビューでは巨匠らしく含蓄のある言葉を残している。バッハやベートーベンは音楽の
法則を熟知して法則に従って作曲したのだということ。ベートーベンやシューベルトはその
暗い人生にもかかわらず明るさに満ちた曲を書いていること。音楽の不思議さがそこにある。


No.009 AIX records 1339AX (2002)DVD audio

STRAVINSKY & RAVEL

THE ”George Enescu” philharmonic orchestra 、指揮 Cristian Mandel



組曲 火の鳥とボレロを収録。96kHz 、24bitのPCMで素直に録音されているDVD audio
は文句がつけようがないほど自然で高音質だ。特に今のシステムだと本当にいい。静寂から
湧き上がってくる柔らかいオケの音が歪み感ゼロで爆発する。これに比べるとSACDの音が
悪いのが残念だが、これでアナログ盤にこだわる必要が無くなったとも言える。今のシステム
を入り口から出口まで書いておくと、

PIONEER DV 515
DENON PRA2000
K180 SEPP DC アンプ
FE103 SOL バックロードホーン

となっている。 プリアンプは長岡鉄男と同じだが他は若干進化している。


映画 最後の審判 (1965)

主題歌のピアノ伴奏が面白い。武満徹の研ぎ澄まされたピアノ感覚が出ている。お金持ちで
美人(淡島千景)を嫁にもらい、順風満帆の従兄を嫉妬からズタズタにしようとする男(仲代
達矢)が主人公だ。美人の嫁は眼科医でこの男と関係を持ってしまった。ここから始まるので
もう破局が見えているではないか。当時の富裕階級のベタな生活が出てくる。周りとは違った
外車に乗り、休日は猟銃を射ち、夜はリリークラウスの演奏会に行く。さて男の作戦とは従兄
を自滅させ、嫁と預金を自分のものにするというものだがいろいろ小細工を弄するのである。
まず喫茶店のウェイトレスを籠絡し婚約者にして嫁との関係をカムフラージュする。

男はビリヤード場の店長を生業とし、競馬好きでパチンコ屋を買収しようとしている。
ヤクザにも目をつけられているがうまくかわしている。計略に乗せられた従兄は妻の浮気相手
を猟銃で撃とうとするが思いとどまる。生きていた浮気相手の男を従弟が射殺してアリバイ
工作もする。従兄は逮捕されるが警察の科学捜査によりシロという事になり従弟の方が疑われ
る。衣服から硝煙反応も出て男は自白した。女には最後に裏切られたが事情を知り怒り狂う
従兄を見て男は大笑いして終わる。

アランドロンの太陽がいっぱい(1960)のような映画だが、要所要所でお座敷小唄が流れて
おり老刑事も伴淳三郎だったし何か垢抜けない映画だった。


映画 大丈夫であるように ーCocco 終わらない旅ー (2008)

音楽活動を通してメッセージを発信しているCoccoを追ったドキュメンタリー。沖縄に
ルーツを持つ31才(当時)の女性シンガーソングライターだ。庶民目線のMC、複雑で高度な
楽曲、明るい歌声、左翼的メッセージが特徴だなと思った。活動は十分メジャーなように
見えたがメディアへの露出が極端に少ないのだろう。全然知らなかった。

基地問題、環境問題、原発問題に切り込んで行く姿勢があるが一方では何もできないと
謝っているのでゴリ押しでは無いようだ。


No.010 MOTETTE M10350 (1977) 30cmLP

PIEERE COCHEREAU an der Orgel Notre-Dame Paris



ピエール・コシュロー(1924ー1984)はフランスの作曲家、オルガニストでパリノートル
ダム聖堂のオルガニストも務めた。これはオットー・バーブランのトッカータ、幻想曲、シャコ
ンヌを含む曲集で最後のトラックにコシュローのインタビューが収録されている。ノートル
ダム聖堂のオルガンの音はシャープな印象を受ける。トッカータの曲想が面白い。

独語、仏語によるライナーノーツがありノートルダム聖堂の創建の事、設置されたオルガンの
事、ルイ13世の事、オルガンを弾いたシュヴァイツァー博士の事、などが書かれている。
Gerard Delatena によるインタビュー全文も載っている。これによるとピエール・コシュロー
が述べているのは、作品を書いたオットー・バーブランとアンリ・ガナバンについて、音楽院
で直接教わった事、彼らの作品に用いられている対位法の事、ノートルダム聖堂で行われた
日曜コンサートの事、オルガンの豊富な音色設定(109以上)の事などであり実際の設定例も
いくつか載っている。

コシュローは作曲、演奏旅行を行ったほか音楽院の教授も務め子どもを二人音楽家に育て
た。


映画 指輪をはめたい (2011)

置き薬の営業マン輝彦(山田孝之)が記憶を無くして仕事に復帰した途端いろんな女が
関係を迫ってくる。順番に真木よう子、池脇千鶴、小西真奈美だが何も覚えていない輝彦
は逃げ回る。婚約指輪を買ってあったけれど一体本命は誰なのか。のらりくらりと会って
いるうちに女たちの素性がだんだん明らかになる。順に風俗嬢、町の人形劇屋さん、同僚
研究者だが指輪のサイズが合わないようだ。

実は本命は謎のスケーター笑美で輝彦が記憶を失う前に振られているのだ。結局3股を
かけられていた女たちは地雷化して修羅場となる。輝彦は記憶を取り戻し振られた経緯も
出てくる。笑美と輝彦は同棲していたが笑美の方が輝彦を振って別の男と婚約したのである。
ショックを受けた輝彦はスケートリンクで凍死しようとして記憶を失った。

で最初の話に戻るのだが修羅場後の顛末が出てくる。風俗嬢は結婚し、人形劇の人は
ブレイクし研究者は栄転し輝彦は会社を辞める事になる。こんなベタな展開は蛇足のような
気がした。


クロスシャント増幅段採用 Sic Mos FET アンプ



これはクロスシャント増幅段の第二弾だがマジパネェアンプだった。きつさが改善するか
なと思って作ったら実にパワフル、キメが細かい。Sic IGBT も出ると言うしこの後どうなるの
だろう。


映画 血と砂 (1965)

敗戦前の北支戦線で八路軍と戦うというシチュエーションは満鉄映画のようだが少々パロデ
ィ化しているのではないか。軍楽隊がディキシーランドジャズをやるし、音にエコーは付いて
いるし、下ネタも多い。慰安婦たちも屈託がない。だがこのゆるさも本当ではと思える節も
ある。

主人公の曹長(三船敏郎)はヒューマニストだが軍人として肝も座っている。素人の軍楽隊
を指揮して砦を奪回するところは七人の侍みたいだったが、結局八路軍に殲滅させられるとい
う悲しい物語だった。


No.011 Aulos Aul 53589(1987) 30cmLP

Marcel Dupre Chefsーd’ouvre pour orgue



マルセル・デュプレ(1886ー1971)はオルガニスト、作曲家。パリ音楽院の院長も務めた。
標題は傑作オルガン曲集といった意味。A面は(オルガンのための)受難交響曲が収録されて
いる。四楽章からなりそれぞれにイエスキリストにちなんだ標題が付けられている。曲は即興
的、前衛的で難解な感じがする。B面には有名な小品が収録されている。行列と連祷、プレリ
ュードとフーガ、嘆きの日、スケッチという標題が付けられている。抒情的で印象的な曲が
並んでいる。

録音場所はベルリンの聖マシュー教会、演奏はLudger Mai。

(つづく)