2013年の音楽生活4

   Key of LifeのSACDが有ることを知ったことがオーディオライフの復活につながるとは。私にとってオーディオ
 ライフとはプライベートな部屋と装置で本でも読みながら時間をつぶす行為なのだ。もし音が気に入らなければ
 装置をいじるかほしい機器を考える。昔はFM雑誌、オーディオ誌ともに充実しておりそれを読むことでいい音
 への夢想が広がったものだ。

   オーディオライフの崩壊は読む本とオーディオ誌の消滅がもたらしたと考えられる。何故なら私のオーディオ装置
 とレコードライブラリーはまだ命脈を保っているのだから。

   さてやっと通販でKey of LifeのSACDが届いた。If it`s magic から As に変わるつながりの部分が何とも絶妙で
  素晴らしい。ハイハット・シンバルも低音の充実度も良かった。さすがSACDだ。

   読む本はこれから少しづつ仕入れてゆく。まず村上春樹の遠い太鼓を買ってきた。彼の文章は言いたいことの割り
 に長いと思う。


  芥川龍之介 歯車

  ここまで神経を病むと本人の言う通り地獄に堕ちている感じになるのだろう。いろんなものの偶然の符合
が悪魔の存在を信じさせるのだろう。

  妻子を持ったことと本を読みすぎたことが明らかにマイナスになっている。それに薬物依存が加わると立ち直
ることが非常に難しくなる。

  実生活の断片が書いてあるのだがタバコと酒の種類はこだわりがあるようだ。食べ物についてはなにも記して
いない。




  そろそろ夏も終わりのようだ。


   NHK コロンビア白熱教室  幸せになる技術 最終回 幸せになる選択とそれを阻むもの

  コロンビア大学ビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授の講義

  いよいよ幸福論に科学のメスが入るのかとワクワクする。

   ◯日々の選択が幸せになる鍵となる。

   ◯幸せになる秘訣はインナー・コア(真実の自分)を発見し自分の人生を知ること。

   とコメントした後ディスカッションにはいる。

   問  幸せの定義とは?

       聴講生からいろいろとアイデアが出たが結局すんなり定義できないと結論付けた。

   ◯幸せのための選択を惑わす障害物を体系的に調査し明らかにする。

    ここがこれまでの幸福論と少し違うところだ。簡単な実験と定量化も行われている。

   ◯就職先を選ぶ場合数値にこだわらずに直観で選んだほうが満足度が高い。

   ◯パートナーは数値や条件にこだわらず直観で選んだほうが長持ちする。

   このへんが新しい研究成果らしい。

   ◯婚活の秘訣は多くの選択肢に自分を投げ入れないこと。

   ◯自分の欲しいものを知ること。

     美女を使ったハニートラップの実験も行っている。

  ◯将来自分を幸せにしてくれるものについての思いは大抵間違っている。

     お金のことについて述べているが結論は昔から言い尽くされているようなものだ。

  ◯70%の人はわかっていても間違った選択をする。

  ◯自分は周りの人とそれほど違わないと考えることは生きる技術として大切。

  ◯しなかったことの後悔>してしまったことでの後悔

   どういう選択をしたかノートにつけなさいとも言っている。無意識のうちに同じような選択をしていたり、
  選択を先送りしていることに気づくようになるだろう。このへんを改善するだけでも大きい。


   NHK Eテレ ドキュメンタリー 7年ごとの記録 イギリス 56歳になりました

  この人生のプロスペクティブスタディは何かの介入の効果を見るわけでもないようだ。但しテレビで国中に
 放映されるわけだから大変危険でもある。

  スー(女) ロンドンの下町出身。今はロンドン大学職員。独身で持ち家があり両親、子供3人がいる。本人は
         幸せと言っている。

  ポール ロンドンの養護施設出身。今は高齢者ビレッジで雑用係。共働きの妻、子供、孫がいる。

  ニール リバプール中産階級出身。大学を中退し今は地方議員。収入は少ない。生涯独身を貫くつもり。

  ピーター ニールと同級生。ロンドン大学卒業。今は公務員兼ミュージシャン。妻と子供が二人いる。

  ジャッキー(女) ロンドン下町出身。今は無職。独身で子供が3人いる。

  サイモン 養護施設出身。今は航空貨物会社員。再婚し妻と子供二人。

  もし各自が比較的正しい選択を繰り返していたなら、ニールは変わっていたかもしれない。サイモンも
会計士になっていたかもしれない。女性陣はしぶとく生き残っているなあと思う。

 


  本を読めば読むほどオーディオライフが充実する。DVD audioだがPat Metheny GroupのImaginary
 Dayというアルバムはとんでもなく音がいい。

  今の状況を探ってみるとDVD audioはほぼ死滅状態、SACDとLPは復活してきている。少しづつ買ってゆく
ことにしよう。

  下調べをして本を読んでいると全然つまらなくなることに気づいた。堀辰雄の聖家族も菜穂子も誰が誰か
 特定できるのでわざと設定を変えていることが変に気になってくるのである。



  2008年ごろ集めておいたDVD audioとSACD

  プロコフィエフの交響組曲 キジェー中尉が入ったDVD audioの音を聴くとオーディオの贅沢の極みを
感じることができる。CDやSACDでは出すことのできない音だろう。


  映画 見えない恐怖

  ロケ映像も美しいし、伏線もあり、ええっというような展開もあるかなり楽しめる映画と思う。終局には少し無理が
あるような気もしたがまあその分早く終わってくれて良かったと感じた。音楽も不思議な盛り上げかたをしてくれて
いてよくできているなあと感心した。

  痩せゆく男とシャイニングの雰囲気が一本で楽しめる映画だ。


  内田樹著  下流志向

  教育やニートの問題について知的な考察がなされている本だとは思ったが賛同できる点は少なかった。

  一点指摘しておくと子供が発信するノイズを親がシグナルに変換するという表現があったが、電気信号を
見てみるとシグナルはノイズに埋もれているものとして存在しているだけであって、ノイズを変換するとシグナル
になるというのは比喩として見苦しい間違いであると思う。

  強いて言えば子供が発信する信号の歪が大きすぎて親に伝わらないから教育で歪を減少させるという
比喩のほうがしっくり来ると思う。

  重たい負荷に対しても子供に歪を発生させないというのが教育(NFB)の持つ効果だろう。


  NHK Eテレ ドキュメンタリー 7年ごとの記録 イギリス 56歳になりました 後編

  ブルース  オクスフォード大学数学科卒 数学教師40代で同僚?と結婚 2児をもうける
          夫婦仲は冷え込んでいる  寡黙

  ニック  スコットランド農場生まれ オクスフォード大学物理専攻 同級生と結婚 1児をもうけるが離婚
        スージーと再婚する  核融合の研究者を経て教授  お喋り

  スージー(女) スコットランドの富裕層出身 両親の不仲に悩んでいた 3児をもうけるが離婚  ニックと再婚する

  リン(女) ロンドン下町出身  図書館員から学校運営委員 郵便局員の夫と結婚。2女、孫がいる。

  アンドリュー  富裕階層出身 ケンブリッジ大卒 事務弁護士 結婚し2児をもうける 広大な別荘所有

  ジョン  アンドリューと同級生 オクスフォード大学法律学専攻 法廷弁護士 ブルガリア人女性と結婚 
  
  トニー  ロンドン郊外下町出身 騎手からタクシー運転手へ ロンドン郊外に一戸建て所有 スペインの
        不動産に投資 妻と子供が3人いる  生活力旺盛

  ブルースとニックはイギリスの理系のエースだしジョンとトニーは文系のエリートだ。スージーとリンは美人
だ。男性陣は最初は勢いがあるが困難にぶつかってだんだんしぼんでゆくのがわかる。女性陣は最初から
クールだ。

  皆イギリスの経済破綻と公共予算削減に苦しんだが子世代はもっと厳しいようだ。この番組プロデューサー
は7歳までに人はつくられると結論づけた。たしかに階層の変化がほとんど見られない。アンドリューの妻のみ
が婚姻によって階層上昇を果たしている。


  「歴史とはスキーム崩壊の集積である。」

  これは私が考えた概念だが(あやめと世界史入門)、他に誰か言ってないだろうか。



  トゥキディデス  歴史 「歴史は繰り返す。」

  ローウェル 書物と図書館 「歴史とは明確にされた経験である。」

  シラー  諦観 「世界史は世界審判である。」

  ブレンターノ 悪 「世界史は人類の運命の集合から生ずる。」

  カー     「歴史とは現在と過去の対話である。」

  マルクス、エンゲルス 共産党宣言 「今後、存在するあらゆる社会の歴史は階級闘争の歴史である。」

  小谷野敦 日本人のための歴史入門  「歴史は偶然の連続である。」



  どうやら大丈夫のようだ。


  これは人生についても成り立っている。

  人生とは偶然の連続である。

  人生とはスキーム崩壊の集積である。

  どちらが実情にあっているだろうか。たまに偶然が作用するくらいで殆どは目論見があってわれわれは行動
しているはず。それがいろいろな程度にぽしゃることはよくあることで、完遂した場合もゼロ崩壊と考えればよい。


   映画 落下の王国

  仕掛けたっぷりの映画だが冒頭と結末に流れるベートーベンの交響曲が印象的だったのでiPodで第何番だったか
確認した。見終わった後で冒頭のシーンをもう一回見ないとシーンの意味が完全にはわからない構成だ。このような
場合劇場で見る主義の人はどうするのだろう。私はすぐ巻き戻して見たが。


  秋になったのでポタアンを作ってみようかと思う。今回はきまぐれではなくLME49600の音の良さに驚いたからだ。
前回の作と同じ音のアンプがどうしてももう一つ欲しい。








  アルボムッレ・スマナサーラ 著 気付いたら・・・もう「幸福」になっていた!

  一般的な人の幸福の定義が述べられていてあっと驚いた。所有欲、知識欲、権力欲、健康と美これらが
満たされることが幸福であるという。煩悩そのものが幸福の実体とは。

  行者の立場から考えると煩悩を消滅させれば完全な幸福の状態になるわけである。

  これは一般的な人から見ると不幸なのでやはり堂々巡りになる。

  煩悩は無限では無いと思うので一般人は煩悩を追求して行き時間切れになって死ぬというのがやはりいい
のではないだろうか。

  煩悩が全部達成されて時間が少し余っていたら望外の幸せということになる。

  行者は修行している間に時間切れになる。


  映画 セルピコ

  悲しい結末から始まるので観ている間、セルピコ可哀想にとしか思えない映画だ。

  「女が美人で男に宿命が無ければ幸せになる。」

  「宿命から逃れようと思えば逃れられるが、周りが全部腐っていたら終わりである。」

  まあこれを地で行っている映画としか言えない。それにしてもこれは相当強力な法則だ。

  これを逆さにすると幸せになる道が見えてくる。

  「美人と結婚し宿命から全力で逃げて因縁を遠ざける。」

  仏教でもここまでは教えてくれないだろう。


  向井万起男著  ハードボイルドに生きるのだ

  不思議な軽妙さのあるエッセイだ。どんどん読み進んでいると終わり近くにこんな記述があった。

「この世に生まれて、煩悩に振り回されて、そして死んでいくのって案外悪くないことなんじゃないかと
思えてくるのだ。」

  似たような結論に至っている。


  米井政幸 著 やりたいことをやるしかない

  題名でピンときたがこれも一つの幸福論だ。我々は若いときは夢と幸福が両方得られるように考えているかも
しれないが、夢とは不幸との親和性が強いものなのだ。

  著者は「幸福は何も生まない。」という考えに至るがまさにその通りだ。何か新しいことをやり遂げた人は殆どが
ある程度の不幸に落ちているのではないか。

  熊、毒蛇、台風の恐さ、陽光の微妙な違いについて教えてくれる本だ。


   山田太一 著 空也上人がいた

  老人のセリフが山崎努の声で再生されてしまったが他の登場人物については誰ということもなく読めた。途中
あまりに邪悪な提案を老人が申し出た場面では読むのを中断して笑ってしまったが、後は一気に読了した。

  男が係累もなく蓄えがある状態でこの年まで来た時のサンプルケースとして参考になる小説と思う。


  夢と幸福は相容れないものだと書いたが、幸福の実体が煩悩であるということを考えれば実際には
幸福の敷居は低いものなのだ。

  夢と幸福をごっちゃにした事によって幸福のハードルがめちゃくちゃ高くなっているだけの話なのだ。

  シーナ・アイエンガー教授の、

  幸せになる秘訣はインナー・コア(真実の自分)を発見し自分の人生を知ること。

と、ITVプロデューサーの、

  人は7歳までに作られる。

と、2chの

  普通にやっていれば良い。(長生きするかどうかは)あとはDNAが決めてくれる。

  という言葉は同じことを述べていると思う。ただ折角いいDNAを持っているのに埋もれてしまう場合が
あるので、何かにチャレンジする前に脳を活性化しておくことが必要だ。その前に親が教え込もうとすると
駄目になる。


  映画 おとし穴

  安部公房脚本の貴重な映画。2度めの視聴になるのでエキストラ出演した安部公房と武満徹を探して
みたがはっきりと同定できなかった。後年の風貌と若い頃のそれの違いによるものかもしれない。

  死者と生者の掛け合いがシュールで映像も良く出来ている。これなら安部公房文学を充分表現できて
いるのではないかと思った。


   本年第6作 LME49600 discreteヘッドホンアンプが完成した。

  音はこれで良いようだ。音像が固まらず間口が広い印象だ。高級プリアンプを使ったときの感覚に
似ている。音は柔らかくよく切れ込み情報量が多く帯域のバランスが良い。

  このような音のバッファはディスクリートでは作れない気がする。




  映画 プレッジ

   冒頭に何もかも失って放心している初老のジャック・ニコルソンが出てくるので取り返しつかない失敗だった
のだなと推測はできる。

  結末がそれに相応しい悲劇かというとそうでもない。真犯人は明示はされなかったが、ものすごく具体的に暗示
されているわけで、元刑事の目論見はおそらくうまくいったのだろう。クリッシーとその母らとは別れたわけだが、元々
副次的なつながりしかなかったわけで、今回の失敗が無くてもいずれ別れていたと思う。

  アメリカ版ファウストとして考えてみると、悪魔があらわれて俺を捕まえてみろと博士に言うのだが、悪魔はへまを
して死んでしまう。グレートヒェンとヘレナは去ってゆき博士はお酒とタバコで老いぼれてゆく。

  ハイヤームのようにすれば良いのにと思う。


   安部公房 燃えつきた地図

  主人公のぼくが最後に依頼人の根室波瑠の部屋を訪れて、とうとう関係をもち波瑠がネガに変わっていったところまで
の時系列はおかしいところは無いのだがそこからが変である。

  ドナルド・キーンを始めほとんどの読者は今度は主人公が記憶をなくして失踪したと解釈しているがどうも変だ。

  そこからの話はぼくが波瑠のベッドで見ている夢なのではないだろうか。そのほうが辻褄が合うのだが。

(つづく)