モジュールXIVを詳細設計する

  MOS-FETとくに古いオーディオ用の石は、伝達特性のカーブが急峻でなくクロスオーバー歪
が発生しにくいようです。


  (メーカー発表特性図より作成)


 とくにK135はなかなかカットオフしませんし、K1529と比べてもプッシュプルのつながりが
良さそうです。




  今回はgmがK135とK1529の中間の東芝K405を調べてみます。




 まずこのような回路で、伝達特性、対称性、直線性、クロスオーバー特性について
検討してみます。



Id (mA) Vgs1+Vgs2 (V)
10 3.01
30 3.38
50 3.59
70 3.7
100 3.84


Zo=1.8Ω (Id=100mA)
  =2.4Ω (Id=50mA)


  三角波を入力し、アイドリングを変化させます。









  2次歪が大きいことがわかります。



  クロスオーバー歪がでてきました。無帰還にしてはきれいな波形です。



それぞれの出力電流です(伝達特性)。どちらがどちらかは不明。





  良く似ています。


  結論 出力段にはなるべくNFBをかけておきたい。オーバーオールでも良いし、後述する
      超フォロアも有力である。


  カーブトレーサーで静特性を見る。

  カーブトレーサー完成しました。


K405



  gm=1.14S


初段をクリップさせる。

a)バイポーラ

  1チップデュアルトランジスタA1349




  特性はよく揃っています。


  三角波クリップ寸前


  4倍に拡大


  このようにどちらも歪がかなりあります。

b)FET





  対称性もよく歪みも少ないし、gmは小さく、多く電流を流してもなんの不都合も生じません。
スルーレートも改善します。

結論 歪みを少なくするには初段FETが有利。勿論オーバーオールで改善するというのは、
論外です。


2段目の選択

a)バイポーラシングル



 以下は電圧増幅段のみの特性

  1kHzサイン波入力時







b)バイポーラ差動合成



以下は電圧増幅段の特性

1kHzサイン波入力時


  対称合成により2次歪が消失しています。が、3次歪みを無理やり聴かされている
ともいえます。

  


  結論 バイポーラの対称合成はやめておこうと思う。3次歪みが加わるともしもとの音が純音
      なら、パイプがピーと鳴るような音に変化する。(シミュレーションノート3の#101参照)

      そうそう純音再生というのを提唱してみるとどうだろう。音楽は勿論純音音楽を作らねば
      ならないが。これならプッシュプルアンプを聴いて、うーむこのアンプは純音再生に向いて
      いないと言ったりできます。

c)FETシングル

  ダイオードでバイアスを作り、電流帰還がかからないようにしてあります。






  こんどは電流帰還をかけます。






 このように直線性良好となります。



c)V−FETシングル





  このように電流帰還なしでも直線性が良いです。

結論 2段目はJ−FETかV−FETのシングルでゆこう。J−FETの対称合成は良いかも
しれない。V−FETの対称合成はいまのところ不可能。


  推奨回路


  又は


  これは結局仮想オペアンプシリーズのNo.5とNo.7です。聴感で判断したのと同じ結果です。


  超フォロア3のテスト(ゲインスクレイパ−)

  原理についてはシミュレーションノート4の#158を参照してください。




R1=10kΩ  ゲイン6分の1










  改善されています。見事ですね。


R1=3.3kΩ  ゲイン3分の1

Zo=1.4Ω









 改善度はすくなくなります。


結論 ゲインスクレイパーはステップダウンが著しいため真空管でドライブしたい。