自由創作アンプ
DCアンプ −−> シングルアンプ −−> 電流演算アンプ −−> 完全アンプ −−>
電流正帰還アンプ −−> ODNFアンプ −−> 帯域電流負帰還アンプ −−> ???
解説
DCアンプはDCの入力があると、DCが出力されるという程度の意味合いであるが、他にも
DCまで振幅位相一定、出力インピーダンス一定という特性も要求されているかもしれない。
そうすると、6番目まではDCアンプだが、7番目はいよいよDCアンプから脱却したといっても
よいかもしれない。
ACアンプは金田氏の主張では、要点だけ言うとDC領域でスピーカーの制動力が劣る、ACと
DCで動作が異なり、複雑であるということであったし、シングルアンプのような2次歪みが出放題
なアンプは、歪み成分が積分されDCとなり、仮に出力に容量があればだんだんDCがチャージさ
れるというものである。だからシングルアンプがDCアンプであっても金田氏はつくることはないの
である。
また電流演算アンプのようなアンプは、入力容量を急速にチャージして立ち上がりを高速にしよ
うという金田氏のポリシーに反するので氏が採用することはありえないのである。
電流正帰還もまた金田式MFBコントローラーと真っ向から対立する考え方なので、あとでやっ
ぱり負性インピーダンスが良かったということにはならないと思う。
また氏はNFBについてはその効用を信じているためか、発表例にはことごとくNFBがかかって
いる。突然DCアンプシリーズに歪み打ち消しアンプが登場するということは、・・・あるかもしれない。
そして帯域電流負帰還アンプもDCアンプではないので、これが最高ということになるとDCアンプ
の看板を下ろすことになり大変まずいので、そうはならないはずである。
と、背景を理解していただいた上で今回の自由創作アンプを見ていただくと良いと思いますが、
もうめぼしいアイデアもないので、単にあのスペースに入る基板という条件で考えてみたいと思います。
ちょっと検討したところでは、ディスクリートパワーモジュールIIは入りそうに無く、モジュールIII
なら楽勝で入ります。
設計中のIVをコンパクトにすれば、なんとか入るかもしれません。しかし小さくできるかどうかは、
作り始めてみないとなんともいえません。
ヒューズは入れましたが、電源スイッチは省きました(たいていプリと連動させるので)。
今までの候補
1 | オペアンプ改良型 | よくわからないが、クールな感じのアンプ |
2 | V−FET使用 | 終段はMOS−FETだが、V−FETの味が出たハイクオリティなアンプ |
3 | 帯域電流負帰還アンプ module III | 低域のしまりと、高域のここちよさが両立したアンプ |
4 | module IV | K405 J115 |
5 | 金と銀 | 1台で多彩な音世界が楽しめるアンプ |
6 | 意表をつくようなシンプル回路 |
まあとにかく、すべてのアンプは素子のもつ非直線性と、合成過程の影響を音に受け継いでおり、
それらはNFBで隠しきれるものではないことは明白です。
もうちょっと遊んでから、回路の選定にはいろうと思います。
3番をもう一組作ってみた。いろいろとシンプル化し帯域電流負帰還が標準装備になっている。
若干おとなしい印象だが、耳を近づけると出ている音は前バージョンと同じである。
少々配線が短くなったからといって大幅に音が変わるわけでもない。
帯域電流負帰還の効果は、うなりをあげながらたたきつけるような低音と表現できるが、少し大げさ
ではある。
6について少し考えてみたが、一石のようなシンプルなアンプはあまり好結果が得られない。
その理由は、増幅につきまとう非直線性が解決されていないからで、理想無歪み素子ができれば
立場は逆転すると見てよい。
直熱三極管、V−FETが近い立場にあることを考えれば、このことは理解できる。
完全アンプや電流演算接続アンプがシンプルでありながら良い結果を得ているのは、直線性
のよい素子の使い方を採用しているからに他ならない。
対称合成の限界も、J−FETのフォールデッドカスコードに見て取れる。これで無歪みになるの
なら、勿論NO.1になるはずである。
結局準理想素子V−FETを用いた、ある程度複雑な回路を採用するのが妥当であろうか。
などと考えているうちに、だんだん気が変わってきて真空管プリにしてみようかと思うようになった。
これである。この設定で仕上がりゲイン6倍だったが、定電流を抵抗に変更するかもしれない。
それにしても真空管で反転アンプというのはやる人がいないみたい。その理由はいまのところ不明。
間をおいているうちにまた気が変わってパワーアンプに戻ることにした。ディスクリートパワー
モジュールIVがちょうど良いのでそれにする。
自由創作っぽいのは、増幅段がV−FETシングルという風変わりな回路であることや、スフェル
ニース製の1kΩ抵抗、V2Aポリカーボネートコンデンサー、2N5462を用いた定電流回路、製造
中止の2SK405などきわめて趣味性の高いパーツで作られることです。
(これらのほとんどはMOS−FETシングルアンプの解体から生じました。)
ふつうのパーツで作っても別に音が悪くてこまるということはありません。
ここでアンプの情報量について考察しておきます。
情報量を増すという技術は特に無いと考えられますから、いわゆるハイエンドアンプは出力段
パラのことが多く、情報量最高とはなりません。
またA級プッシュプルは歪みは少なくなりますが、情報の欠落が生じる可能性があり、その点で
はB級プッシュプルとA級シングルが切れ味と情報量の多さでは有望です。この2つを比べると、ク
ロスオーバー付近で余計な音が出るかもしれないB級プッシュプルよりA級シングルのほうがソース
に忠実な音が期待できます。
余談ですが、もしソースがデジタルならA級シングルを受ける定電流にホワイトノイズをのせれば、
ディザとして働き解像度があがる可能性があります。
片方にはスナバが入っている。使ってみて差があれば、結果が良いほうに統一します。
音の印象
スケールが大きく、音と音の空間があいているので、音が重なって濁ることがこれまでの
どのMOSアンプより少ないと感じました。しかしそれは終段V−FETアンプの特徴であるわけ
ですが、このアンプの音色はMOSのそれです。
ふつうの特性の素子で電圧増幅段を組むと、その直線性の悪さにより結果としてにごりの
ある詰まった音になるはずです。NFBではそれは解決できないのです。
と、断定するにはまだ早いと思いますが、これがなかなかひっくり返せないのです。理論的
に証明するか、事実を持って反証するか、どちらも長い時間を必要とします。
ですからこういう事項は控え目に、予想と呼んでいます。
直感による予想
1 もともとの直線性が良いアンプは、音の空間分解能が優れている。
2 位相が数百kHzまでフラットで、無帰還ならば音像が立ち現われる。
3 NFBを深くかけると1,2ともスポイルされる。