素晴らしい帯域電流負帰還
2ウェイではこのようにツイーターにアッテネーターが入ることが多く、ゆるやかな電流出力
アンプ駆動になります。
このことは長い間欠点と思っていましたが、そうでもないようです。
フルレンジではこのように低出力インピーダンスアンプと直結ですから、当然高域も低インピーダンス
で駆動され、電流歪みや立ち上がり速度の制限などをもたらす電磁制動の影響をうけているといえます。
実際、フルレンジで聴く高域はくっきりはっきりではあるが、うるおいやスムースさに欠けるきらいがあ
ります。
ということは、フルレンジにおいて高域は高インピーダンス、低域は低インピーダンスで駆動できれば、
その問題は解決することになります。
帯域電流負帰還アンプ(2003.10.12)
このように帰還信号をフィルターで帯域分割します。
このようにすれば低域では負性インピーダンス駆動、中高域では高インピーダンス駆動になるような気がしますが、
実際はうまくゆかないので(多分)、
この程度にしておきます。その代わりアンプは強力に電磁制動がかかるタイプのものを選びます。
組みあがったらボリュームを調整し、あまり変で無い音にしてから測定してみます。
実測R6=20kΩ
測定日 | V1(3kΩ) | V2(8Ω) | Zo | 参考 合成R | |
LM1875T帯域電流負帰還 1kHz | 2003.10 | 0.909 | 0.555 | 8496/(1665 - 7.2)=5.1Ω | |
100Hz | 0.437 | 0.406 | 744/(1218 - 3.5)=0.6Ω | ||
一回目ながら、結構いいデータになっているようです。
透明度というのは、電磁制動がかなりの部分を支配しているようです。
例えば、速度型MFBをかけてゆくとオケの見通しがよくなり濁らなくなりますし、普通のアンプで
スピーカーをQo=0.47からQo=0.35のものにかえただけでも透明度が上がったように感じます。
したがって勿論、Zo=5ΩをZo=0.6Ωにすれば同じ効果をもたらすわけです。
この定数でいろいろな音楽を聴いてみますと、さすがに表現力と正確性を兼ね備えたいいアンプ
に仕上がっているように感じます。
このようにして調べてみます。
測定日 | V1(3kΩ) | V2(8Ω) | Zo | ||
シミュレーター VR=40% 1kHz | 0.6051 | 0.5256 | 1908/(1576-4.8)=1.2Ω | ||
100Hz | 0.2635 | 0.2546 | 213/(763-2.1)=0.27 | ||
同 VR=80% 1kHz | 0.904 | 0.6263 | 6664/(1878-7.2)=3.5 | ||
100Hz | 0.3728 | 0.3420 | 739/(1026-3.0)=0.72 | ||
こういう結果がでてみると、この話の信憑性はかなり高いといえます。
またAC解析ではこのような結果がでていますが、むしろ好都合のような特性です。
8Ω抵抗負荷
帯域電流正負帰還もできないことはないのです。
このとおり、
測定日 | V1(3kΩ) | V2(8Ω) | Zo | ||
シミュレーター 1kHz | 1.387 | 0.8552 | 12763/(2565-11)=4.9Ω | ||
100Hz | 0.6124 | 0.8397 | 5455/(2519-4.9)=-2.1 | ||
周波数特性が気になりますが、スピーカー負荷でフラットになる可能性もあります。
やってみなくてはわからないでしょう。
実測データ
抵抗負荷の場合、DCアンプでは低域フラット、帯域電流負帰還では盛り上がります。
聴感では、特に何も感じられません。
デスクリートパワーモジュールIIでも試みました。
測定日 | V1(3kΩ) | V2(8Ω) | Zo | ||
ディスクリートパワーモジュールII 1kHz | 0.706 | 0.526 | 4320/(1578-5.6)=2.8Ω | ||
100Hz | 0.854 | 0.801 | 1272/(2403-6.8)=0.53 | ||
同 1kHz | |||||
100Hz | |||||
参考 電圧帰還のみ | 0.352 | 0.347 | 120/(1041-2.8)=0.11 |
まあ何といいましょうか、今までに聴いたことの無い音です。さわやかで味わいがあり、電磁制動
アンプのいやなところが無いというか、低音の鳴り方も極めて面白いし。
この石の究極の鳴らし方ではないかと愚考いたします。
2003.10.20
(終わり)