エピタキシャルなアンプを作る
今は昔のエピタキシャル王国NECの石を使ってパワーアンプを
作ります。
OCLが実現し、また電圧増幅段の歪みが解決されてくると音質上の
最大のネックは出力段なのです。そのキャラクターはアンプの音質を支配し
ますが、キャラクターがまた魅力になりえます。
古くはサンスイのアンプにNECのD188、A627が使われて人気を
博し、NECがオーディオに参入してからはC2987、A1227を用いた
名機A−10シリーズが生まれました。
出力段の石を契機に名機が生まれると言っても良いでしょう。
エピタキシャルの石の特徴は一言で言うとハイスピードな音です。それを
言えばFETアンプのほうがもっとハイスピードな音ですが、バイポーラには
FETにない味わいがあるようなのです。
例によって電圧増幅段を二組つくり、一組落とします。もし右側で発振
が止められなければ左にしようと思っていましたが、発振はまぬがれま
した。
初段東芝K30A、モトローラ2N5465、2段目にNEC C959、A606
をふんだんに使った電圧増幅段です。こんなゴージャスな回路基板はたぶん
今後は作ることはできなくなるでしょう。
周波数特性
三角波伝送特性
1kHzサイン波
以上が電圧増幅段の実測特性です。
回路
C2987、A1227のほうを組み上げ音を聴いています。電気的に
は問題は少ないようです。
音もだんだんこなれてきました。切れ味と余韻が素晴らしく名機の
片鱗が見えてきました。
もう片方のチャンネルはD188Aを使ったバランス電流ドライブアンプ
(いわゆる完全対称アンプ)になる予定です。
D188Aの方
完成
新旧それぞれの石ですが、とても似た音がします。
要するにこれはオムニバスアンプですが、気が向いたら基板を追加製作します。
付録 エピタキシャルアンプの系譜
サンスイ | AU607 | D188 A627 | ft=10M | エピタキシャル メサ | ||
サンスイ | AU−X1 | サンケン LAPT | ||||
サンスイ | B−2302vintage | サンケン LAPT | ||||
アキュフェーズ | P−350 | サンケン LAPT | ||||
NEC | A−10 | C2987、A1227 | ||||
トリオ | L−05M | EBT NEC C2337 A1007 | ||||
Kenwood | KA5010 | LAPT C2521 A1215 | エピタキシャル プレーナ | |||
Kenwood | KA-1001G | サンケン LAPT | ||||
マランツ | PM14SA | サンケンC2922 A1216 | ft=40M | エピタキシャルプレーナ | ||
マランツ | PM6100SA | サンケン C2867 A1186 | ft=80M | エピタキシャルプレーナ |
LAPTの歴史
NM LAPT(Non magnetic linear amplification
power transistor)
とは、サンケンが製造しているマルチエミッタトランジスタのことで、かつて
サンスイの高級アンプAU−X1,AU−X11に採用され人気を博していたが、
特筆すべきはB−2302vintageに用いられ、長岡鉄男氏の方舟にスーパー
ウーハ−用アンプとして採用されたことである。氏が、これがバランスアンプ
で無かったなら、HMA−9500IIの後釜として使えるのにと言って悔し
がっていたことは有名である。
スピーカーのドライブ能力はMOS−FETをしのぎ、繊細感はMOS−FET
に肉薄する素子であると考えられる。
その後、KenwoodのKA5010、KA-1001Gに採用されたり、アキュフェーズでは
P−350、E−407などに採用されている。アキュフェーズは大人向きの
トーンポリシーかと思いきや、三重拡散からMOSまでと幅広く試みているの
である。
現在では、マランツが超高級機から普及機まで採用しているようである。
又、KrellのKAV−2250(250W定価74万円)に採用されており、日立の
K135とならびこの石は海外でも注目されている。(K135はゴールドムント
に使われていた。)
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