バイポーラ完全対称アンプの研究
金田式NO.139は驚くほど簡略化されていましたので、初心者向きと誤解して
そのまま作った人も多いと聞きます。実はこのアンプは、いろいろ問題を抱えた
アンプで、かなり上級者でないとうまく動作させられないのではと思われます。
私の場合は、これをそのまま作る自信はないので、いろいろ準備段階
を設けて製作することにしました。
問題点1 2N3055の選別をどうするのか
1個づつhfeを測定すれば良いのですが、当時測定法がわからなかった
ので、FETと組んで全体のgmを測定することにしました。
入力より1KHzの正弦波で0.205Vを入れて出力の電圧を読みます。
このようにして12個くらい測定して近いのをペアにします。
実測値 V
1 | 1.30 |
2 | 1.25 |
3 | 1.23 |
4 | 1.21 |
5 | 1.15 |
6 | 1.10 |
7 | 1.09 |
8 | 1.05 |
9 | 1.01 |
10 | 1.01 |
11 | 0.97 |
12 | 0.94 |
問題点2 熱補償をどうするのか
このように負の温度係数のFETを抱かせてしまいます。これを亀の子方式
と命名しました。
実際組んでみると、2段目にカスコードを入れないとA606自体が熱暴走
しそうになります。それでカスコードにしてコレクタ損失を押さえました。
つまりオリジナル回路は、2段目と3段目の石が熱暴走しようとするのを
初段定電流回路で押さえるというきわどい設計であると言えます。
問題点3 作って聴いてみるときつい音がする
電流の設定値が悪くて歪むのかなと思いましたが、原因は終段エミッタ抵
抗のしわざだとわかりました。オリジナルでは0.05Ωでしたが、取り払ってしま
いました。すると安定度は犠牲になりますが、とても良い音になり驚かされま
す。
ちょっと実用アンプとしては安定度が悪いのですが、注意しながら聴いて
いれば大丈夫です。
クロスオーバー歪み
なかなか優秀
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