バイオリン工房






1999年9月7日、BSハイビジョンにて放映された、バイオリン作りの
名匠といわれる佐藤正人氏の製作過程のドキュメント番組の要約



バイオリニスト徳永二男氏が、佐藤氏の渋谷にある工房を訪れ、
ガルネリ デル ジェスのコピーモデルの製作を依頼するところから
始まる。

佐藤氏の経歴、人柄の紹介をまじえながら淡々とバイオリンが製作
されてゆく。ポイントポイントが映像で紹介されていて大変参考
になる。

ニス塗りに2ヵ月かけ、完成したバイオリンが徳永氏に手渡され、
試し弾きされる。弱音部が美しい。

ニスの製法はあっと驚くようなものであるが、製法は公開しているよう
である。(テレピン油+硝酸+プロポリス他)

それにしても厚さが表板3mm、側板1mmとはなんという軽量設計なのだ
ろう。



 その後の調べで、徳永氏はガルネリ デル ジェスをすでに使っていることが
判明。



 ヴァイオリン毛筆説

  ピアノがタイプライターとすれば、バイオリンは毛筆に喩えられるので、日本人
が上手になる下地は十分あるのではないでしょうか。中国、朝鮮も同じで、いいバイ
オリニストが輩出しています。
 さしずめ、MIDI楽器はワープロでしょうか。



 ’99弦楽器フェアが10月29日ー31日まで千代田区の科学技術館で開催され
るようです。行ってみようかしら。



  五嶋みどりさんのガルネリの音と、他の人のストラディバリの音をスペアナで
眺めてみました。さすがに弱音部では面白いスペクトルになります。が、発表する
程でもないのでやめておきます。



佐々木庸一著 「魔のヴァイオリン」 を購入 
 
この分野で有名な本ですが、まことによく調べて書かれてあると思います 
図説というほどの図はなく、ほとんど文章ですが、これは名著でしょう。 
 
続編「ヴァイオリンの魅力と謎」も買おうと思います。 
 



 
さてそろそろバイオリンを作り始めますが、最初は安い木で練習して、 
あとでいい材料が手に入ればそれで作ることにします。 
 
ミネハラの通販で手頃なのを注文してみました。 
 
 




  1999年11月3日製作開始。
 
 ミネハラより荷物が届く。説明書を良く読んで、何から着手するかを考え
る。力木を表板に合わせて削るのが第一歩である。形は大体は合っているの
で、カッターナイフで少し削り、サンドパーパーでもう少し削り速乾木工ボ
ンドで接着した。ここは強度優先なので、ボンドだろう。接着完了まで30
分位手で持っていた。





  わからないことが生じると、佐藤氏のビデオを繰り返しみたり、カールヘ
フナーの実物をよく観察してみるわけですが、このキットはパーフリングもつい
ているし、ネックは一体削り出しだしカールヘフナーよりも高級仕様なようです。

   カールヘフナーコンサートバイオリン(20万円くらい)の音   
           筆者演奏  
MP3





  ネックをはめこむ溝の加工ですが、邦光の木彫刀6本組を購入してやってみま
した。1430円也。
  平刀だけできれいに仕上がるみたいです。ここでネックが左右対称でないこと
に気づいたのですが、カールヘフナーも対称ではないのでいいことにしました。
  佐藤氏のは対称のようです。



  現代ジプシーヴァイオリンの名手ラカトシュですけど、ガルネリを
使っているらしいです。BSの録画でみる限りでは、そんなに凄いとは
思えませんでしたが。どうなんでしょう。


  @niftyのFmidiのライブラリーやインターネットから集めたmidiデータをvision Jで
トランスポーズしてgateway solo3150で演奏させると良い伴奏者になります。

  自分でピアノ伴奏譜を録音してやるよりもずいぶん便利なものです。


  バイオリンの練習をするとき、Bフラット奏法と呼んでいる方法で練習するのです
が、これはなんでもかんでも変ロ長調か、変ホ長調で演奏してしまうやりかたです。

  開放弦を使わなくて済む最低ポジション奏法なので、習熟度がそれほどなくても、
いいかんじが出せますし、練習時間がとれないアマチュアには好適です。

  このポジションに慣れるにつれ、頭でメロディを鳴らしたときに、視覚的に運指も思
い浮かぶようになる(と思います)。


  最近練習しているのは、バルトークのルーマニア民族舞曲、ラフマニノフのヴォカリーズ
、アンダーソンの時計ですべて@niftyでMIDIデータを入手しました。

 (これ実は畏れ多くも五嶋みどりとナタリーデッセーのレパートリーです。)

  それにしてもラフマニノフはなんともロマンチックな曲を書いたものです。

  VISIONの譜面だけではおおざっぱすぎるので、カワイ ショッピングプラザで楽譜を購入
しました。BOOSEY & HAWKS社のラフマニノフが1600円、同じくバルトークのが1800円
でした。(しかしこれらはピアノ譜)

  千住明氏の曲も採譜して練習中です。日本映像の20世紀にはいい曲が多いので、きれ
いに楽譜化しようと思いますが、ここで発表できないのが残念です。


  さて中断気味のバイオリン製作ですが、ホームセンターで材料を集めました。

  スプールクランプ用材料

  径6mm 長さ10cm  ボルト

  蝶ナット
 
  径2.8cm丸棒

  フェルト

  これらを組み合わせて、クランプを自作します。テキストには40から50個用意と
書いてあるのですが、いろいろ考えた末28個用意することにしました。

  材料費は約3800円。

  これができればいよいよ表板のはりあわせです。




   先週集めた材料を元に、電動ジグソーで丸棒を2cmずつカットしてゆきます。
一つ一つが、まっすぐにできないですが、すこし傾いていたほうがいいような気がします。

  Fクランプがいよいよ必要になったのでホームセンターで購入しました。(950円)

  円盤状の木をFクランプで固定して、6mmの穴をあけてゆきます。これもオフセンター
になってしまいますが、このほうがいいような気がします。
 
  粘着剤のついたフェルトをはり、フェルトに穴をあけて組み立てればできあがりです。

  今日は14本つくったところで終わりました。(寒いので残りは来週)


  スプールクランプ28個が完成したので、表板の接着にとりかかりました。膠の溶かし方
は工房ミネハラのホームページに詳しく書いてありました。

  カールヘフナーの実物をみると、完璧に接着されているため、内心恐れおののいていたの
ですが、なんとかそれに近い接着ができたと思います。スプールクランプの威力はすごいという
ことでしょうか。




   イメージ図(あとで撮影したもの)


  表板がついて始めてネックジョイントを仕上げることができます。なるべくぴたっとなるところ
で削るのをやめにしなければなりません。削りすぎると遊びが生ずるからです。

  ガタが生じないように、ネックと本体の接触部をまっすぐに削ることに気をつかいました。
ここがよく合っていると接着後に強度がでると予想されるからです。

(あとでビデオで確認してみると、溝を小さめに彫ってネックをかんなで削ればぴったりにできる
 ことがわかりました。)

 バーフリングの埋め込みですが、接着剤がわからないので考えた末、速乾ボンドを用いました。
このほうがふき取りやすいように思えます。急いだため何箇所か折れてしまいました。(次回は気を
つけよう)

  パーフリングのはみだしを削るのにカッターナイフを用いよと解説書にありますが、彫刻刀の丸刀
のほうがやりやすいように思えます。


  パーフリングの削りは時間のかかる作業ですが、早くも終わってしまいました。丸刀の切れ味は
よく、楽しい作業でした。
  
  次にネックから指板をはがします。これをやらないと、塗装のとき困るのでやらざるを得ません。
お湯を筆を用いて念入りに作業を行うと、パキッという音とともに剥がれました。(ここは薄めのにかわ
で貼り付けてあるのです。よくみると部分的にしかにかわが塗ってありませんでした。)

  緒止めのあたる部分の補強板をつける溝を掘ります。表板は柔らかいので、平刀で切る感じに
近いです。

 このあと、表板の縁がすこしぎざぎざなので、その部分だけ400番のサンドペーパーでなめらかに
しました。表板は基本的にはサンドペーパーをかけてはならないと思いますが、ほかに方法を思いつ
かないので、仕方ありませんでした。


  ネックの接着にはいります。濃い目のにかわをたっぷり用いよということなのですが、前回のにかわ
を再溶解して用いました。(ふたつきの牛乳瓶が重宝する。)佐藤氏のにかわは鹿の骨からつくった
透明なものです。


   ここで掟破りなことをやってしまいました。すこしある両サイドのすきまが気になるので、ネックの
接合部分ににかわを流し込むという暴挙にでてしまいました。(あとで困るかもしれない。)


   もう次の工程で塗装にはいることができます。目止めにゼラチンパウダーを用いよとあります
が、とのこでやると駄目なのでしょうか。考慮中です。

  佐藤氏の塗り方を確認していると面白いことに気づきました。佐藤氏のモデルは表板は縦の木目
ですが、裏板の木目は横方向です。そのほうが音が良いのでしょうか。


   緒止め部の木片を加工し(手作り風の仕上がり)、ボタン部を加工し塗装にはいります。

  エンドピンの穴にテーパーのついた棒をさしこみ柄とし、その最後尾に鉤型ネジをとりつけます。

  目止めは、とのこ、サンディングシーラー、ゼラチンパウダーという選択肢がありますが、今回
はとのこを使ってみました。石の粉は不透明なので塗ってみてあせりましたが、透明ニスを塗ると
透明になります。

  ニスは適当に油性ウレタンニスを薄めてまず塗ってみました。


   解説にニスには天然樹脂をいれよとありますが、DIY店においてあるのは、ウレタンニスと
  アクリルニスです。いろいろ考えた結果今回はこういうニスでやることにしました。


下塗り   油性透明ウレタンニス


中塗り   油性着色ウレタンニス(ケヤキ色)+油性透明ウレタンニス+木彫オイル


上塗り   水性透明アクリルニス


  ケヤキの色はなかなかいいのですが、重ね塗りをたくさんするので、色をうすめました。
 オイルフィニッシュ用の木彫オイルには天然樹脂が含まれています。


  さて上記のようにブレンドして塗ると、透明度が失われることがわかりました。まるでミルク
キャラメルのような色です。したがって着色ニスをそのまま塗ってゆくことにしました。

  一晩乾かしてみると塗料が垂れて滴状になっています。これに対する対策はスピーカー
製作のとき考えてあります。重力を利用する手です。

  ニスは片面ずつ塗ることにし、乾くまで水平にして置いておきます。(ますます時間がかかる)


  裏板の横縞模様は虎目というもので、つまり木目は縦ということでした。このモデルは裏板は
高級でない楓なので虎目はありません。

  アルコールニスでもなければオイルニスでもない、ウレタンシンナーニスを塗っているわけですが、
 だんだんつやもでてきました。ニスとしては丈夫で安定なものなのでしょう。

  さて問題点としては、着色ニスを塗り重ねることによってパーフリングが見えなくなってゆくこと
があげられます。


   パーフリング部の見栄えをなんとかするため、ニス落とし液を買ってきて使ってみました。
塗ってしばらくすると状態が変化し、木へらでこすると消しゴムのかすのように取れてきます。
 この方法で全部落とすのは大変そうなので、表板の辺縁部だけ作業して、着色ニスを1回塗って
おきました。裏板はサンドペーパーでやろうと思います。

  カールヘフナーをよく観察してみると、パーフリングはやはり本物です。木目の連続性がない
ことからそう推定されます。裏板には虎目もありこのグレードのものはいい材料でできています。
 


   カエデの指板をステインで着色して黒檀のようにします。色は黒とオリーブ黒がありましたが、
  黒にしました。溝きりは薄手のヤスリで行いました(ビデオを参考にす)。塗ってみるとてかりが
  ないので本物らしく見えます。

   指板は両面テープで取り付けることにしました。この方法はネット上で知りました。なかなか
  面白い方法と思います。

   駒の下部のけずりはなかなか難しいです。サンドペーパーでやってもうまく行きません。あとで
  もできるので適当なところで次に行きます。

    もう組み立てにはいることができます。エンドピンが穴に対して大きすぎるので、考えた末
  エンドピンの方を削りました。

   組んでみて音を聴いてみました。 おお、魂柱がない状態でもかなりまともに鳴ります。E弦を
  オーストリア製のものに替えてみました。今日から毎日これで弾きこみです。それと魂柱立ての
  練習です。

    (2000年4月3日完成)




   セカンドバイオリンとして活用

 


        Part II


   スウェーデン製スクレイパーセットを購入。歯付けをのやりかたはミネハラのホームページ
に解説が載っています。購入時にも歯付けはされているので早速(でもないか)けずってみました。
サンドペーパーと彫刻刀で荒れた表面がきれいに仕上がるようです。なかなか先は長いですが。

 今回は2台目ではなく、一台目の塗装を半はがしにして、そのまま
寝かしておいたものです。
乾燥が進んでなかなかいい感じです。




  クレモナで行われるトリエンナーレのテレビドキュメンタリーが最近放映されましたが、
マエストロがノウハウをちょこっとだけ公開しています。例えばニスに入れるものとして
コパル、ベンツオーエ樹脂などがあるそうです(それが何であるかは今のところ不明)。

 森から木を切り出すところも取材してありました。樹齢150年の赤モミの木が使われて
いるようです。

  国家試験もあるようですが、あるマエストロが言うには修行は20年、いや30年は必要
ということです。まあどこの世界も同じですが、このくらいで驚いてはいけないでしょう。
 時間がゆっくり流れる環境で取り組むことでこの壁は超えられるのです。日本はあまりに
せかせかしているようですが、このあたりをヨーロッパ伝統文化に学ぶ必要があります。











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