第3作 三栄無線 KT88シングル
仕様変更
1 カップリングにスプラーグのビタミンQを採用
2 内部配線を銀線で
3 AST化を試みる
電圧転写思想なので、非直結シングル回路でよいのです。
さて回路図をながめていると、NFBのかけかたがどうも気になります。3段
アンプなのに、初段カソードに帰還していてはたしてNFBなのか、考えても
なかなかわかりません。2次コイル側で反転しているのかいまのところ謎です。
このアンプ、チョークコイルの場所に小型トランスをいれればマイナス電源が
作れます。そうすると差動回路とかいろいろ複雑な構成が可能なのですが、どう
するか思案中です。MFBのために深い帰還をかけたいわけです。
単に定数を変更してNFBを深くするというのがやりやすいのですが。
オペアンプを前置してオーバーオールのゲインをあげれば半導体アンプのように
MFBをかけられることはほぼ確実ですが、その場合真空管アンプの持ち味が消さ
れてしまう危惧があります。
と考えたりしているうちに、6BQ5アンプでAST化が成功したので、その定数で
つくることにします。固定抵抗でよいので、追加部品はたったの3個(片chあたり)
で済みます。
製作メモ
1 入出力端子の取りつけ。
2 トランス、ケミコンの取りつけ。
3 AST関係が複雑なので、入出力関係の配線を先に行う。そのためラグ板を1個
追加。アース配線に銀線を使う。ボリュームを省き、その代わりに抵抗をいれる。
4 ヒーターの配線。このときピン関係をチェック。ヒーターはすべて並列であること
を確認。
5 AC、スイッチ、ヒューズ、パイロットランプの配線を行う。
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スイッチON。ヒーターが全部点灯していることを確認。このときの消費電力
は29Wであった。
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6 部品をトレイにいれておき、思考の順番どおりに組みつけて行く。配線では
やや先読みしながら余計な手間が生じないようにする。
7 カラーコードの部品は最後に残しテスターで確認しながら組む。
8 出来上ったらひととおりチェックしてしばらく飾っておく。今使った脳で何度チェック
しても同じなので、次回脳がレフレッシュしたらまたチェックする。
案の定帰還の配線を忘れていた。
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これで絶対間違いが無いと保証できる確実な方法はないので、いくつかの
必要条件を適用して破綻がないことを数多く確かめるしかない。
必要条件の例
a ヒーター配線の段階で異常があるとだめ。
b 目で見て間違いがあるとだめ。
c 内部抵抗をチェック。
d 絶縁をチェック。
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9 ハンダくず、リード線が落ちてないかチェック。半田不良がないかチェック。
半田が少ないところは足しておく。
10 実体配線図と比べての最後の部品チェック。ちゃんと部署にいるか点呼に
似てなくもない。配線が色分けされているのでとても見やすい。
11 内部抵抗 電源オフ時∞、オン時3.9Ω
12 シャーシとACプラグの絶縁OK
電源ON
電流正帰還抵抗を4.7kΩにしたので、発振が心配だったが問題無し。両CH
とも良い音で鳴っている。
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測定コーナー
通常使用時消費電力 65W
出力インピーダンス -0.3Ω
定格出力 6W
雑音歪率特性
V | W | 実測V | 実測W | 歪率 |
0.283 | 0.01 | 0.282 | 0.12 | |
0.490 | 0.03 | 0.497 | 0.13 | |
0.692 | 0.06 | 0.688 | 0.17 | |
0.894 | 0.1 | 0.892 | 0.22 | |
1.55 | 0.3 | 1.56 | 0.38 | |
2.19 | 0.6 | 2.13 | 0.54 | |
2.83 | 1 | 2.80 | 0.71 | |
4.90 | 3 | 4.94 | 1.4 | |
6.32 | 5 | 6.36 | 2.4 | |
8 | 8 | 7.0 | 6.1 | 5.8 |
8.9 | 10 | |||
10.9 | 15 | |||
14.1 | 25 | |||
15.5 | 30 | |||
18.9 | 45 | |||
24.4 | 75 | |||
28.2 | 100 | |||
89.4 | 1000 | |||
KT88シングル ウルトラリニアAST 銀線仕様の完成です。
(2001年1月製作)