FOSTEX FE168Σバスレフ(FE168Σ使用レゾネーター付き1WAY )

  MFB20+5HH10の音を聴いていると、質は別としてこのくらいの
パフォーマンスなら16cmフルレンジバスレフ+ASTで可能だなあと思
えてきます。

 高域の良く伸びた16cmというと、テクニクスのEAS16F20、フォステクス
FE168Σなどがあります。殊に168Σは難物で、バスレフではハイ上がり
となることから、長岡師は巨大バスレフBS168を発表しています。
  内容積46L、ダクト面積99平方cm、ダクト長10cm、fd59Hzといった
スペックとなっています。

  
                周波数特性(3m)

   何故かFE103よりも高域が伸びているのです。また例によって
100〜200Hzが落ち込んでいるので、ポピュラー音楽ファンがこのまま
作ると悲惨なことになります。

  fdを80Hzくらいに設定して、電流正帰還MFBをかけるというのが、
常道です。内容積は12L、持ち運べる大きさにします。


  次の言葉を思い出してください。

 MFBまたは電流正帰還によりコーン共振のQcは下がり、ダクト共振
のQdは上がる。

  解説
  

  つまりアンプによる制動が弱いと、理論どうりにバスレフ
は動作していないことになります。

  MFBをかければQdが上がることによりエネルギー効率が
あがるので、箱を大きくしないですむ可能性があります。


  よく設計された10cmフルレンジシステムはリズムセクションの音を音符の
欠落なしに再現してくれるので、音楽を知的に楽しむ目的に向いています。
  20cmのシステムは、それに音の豊かさが加わるので感覚としても楽しめ
ます。またそうでなければ意味がありません。またMFBによってfo共振を排除
したシステムはオーケストラのにごりのない再生には必須といえます。
  
  では16cmフルレンジバスレフシステムはどういう位置付けになるのでしょう
か。知的であり肉感的であるところまで到達できるかどうかは、これから知ること
になるでしょう。


  このあたりからフルレンジバスレフをレゾネ―ター付き1WAYと呼び習わす
ことにしたいと思います。

  フルレンジというのは誇大表示であり、バスレフレックスというのは誤りだから
です。

  レゾネ―ター付き1WAYというのが正しく実体を表しているのです。


  なかなか製作が始まらない理由は、それはユニット価格が意外と高い?
ことも影響しています。2本で2万円というのはJBLの16cm同軸2ウェイが
買える値段なので、そちらにしようかと迷ったりする余地を生じます。

  でもやはり純粋パルプコーンの強力磁気回路の音を聴いてみたいという
のが作らせようとする動機でしょう。(さんざん聴いていますが)


  最近フェイ氏作のFE83バスレフをUHC−MOSシングルASTで鳴らして
見ましたが、素晴らしいパフォーマンスです。良く伸びた高域とレゾネ−タの働き
で音が明確に理解できます。HMA−9500IIにすると途端に音が濁るのでAST
の働きはこうしたシステムには必須と言えるでしょう。

  MOS−FETとパルプコーンのコンビでの高域の圧倒的な情報量による音場感
と定位、fo共振の抑制によるにごりのないハーモニー、正確なバスレフ動作による
明快なリズム楽器。これらが揃うと音楽鑑賞の知的な楽しみは満足されます。(原音
に近いかといわれるとそうではないわけですが・・・。大口径でやったほうが感覚的に
は原音にちかくなります。)


  今度はFE103(16Ω)ペリスコープをレファレンスシステムにいれて聴いてみま
した。PRA−2000ZRにはトーンコントロールがあるので、BASSブーストを利用し
ます。ダクトのチューニングは低めですが、これによってほぼ完璧なバランスになりま
す。
  それにしてもパルプコーンの音は面白いものです。これをつきつめてゆくとBC10
のバイオセルロースになるのでしょう。近いうちにFF125Kのケナフ+バイオセルロー
スの音も聴いてみることになるので楽しみです。


  スーパースワンは30cmクラスと同等といわれていますが、私の論を援用すると
スーパースワンはやはり知的領域のスピーカーであることになるでしょう。かるーい
低音が乗るのではないでしょうか。かるーい低音こそ楽器の低音に近いのだという
説もあり、議論は錯綜してくるのでこのくらいにしておきます。





  今回やっと入手できましたが、買ったわけではありません。記事の進行が
あまりにも遅いので、協力してくれる人が現れたからです。

  豪華なダイカストフレームと軽いコーンが特徴です。やや弱いコーンと磁気回路
はMFBによって補うので大丈夫です。

  例によってバッフルの諸元を与えれば設計は終わりです。(定型的バスレフなので。)
ポート出力を大きくするために箱を大きくするかどうかは、しないでも大丈夫と考えて
います。




 HMA9500IIを負性インピーダンス化してみました。もしこわれるとまずいので、
長い間実行しませんでしたが、今回やってみました。これは成功でしたが、少し
ノイズがはいるようです。



  いままで聴きなれたソースがエコーで充満したようにきこえます。(もちろん
エコーがかかったのではなく、スピーカーによる音のにごりが一掃されたからに
他なりません。)

  エコーの形まで見えるかのようにわかってしまいます。


  諸元の与えられ方は偶然による部分が大きいといえます。然る後に計算に
よって細部が決定されます。
  何故その値になったのか説明はできませんが、造形的に美しいものである
ならば、それが最善のものである場合が多いようです。

  というわけで偶然見つけたは端材でバッフルを作ります。ムク材なので一枚
は反りが出ていますが凸面を前のほうにします。



 デザイン上ダクトは丸穴2個としました。




  冬の晴天の日、バッフルのカットを行いました。





  突板仕上げをいろいろ手掛けた結果、このような大きいものでは、
斜めカットにしたほうがかえって手間が掛からないですむという結論
に達しました。



  バッフルを少し削ったところで、本体にとりかかりました。バッフルにも節が
あるので節ありの檜集成材にしました。かんなを入れるところが木目方向に
なるよう考えました。

  バッフルを削って行くうちに少し小さくなったようです。




  こう組みたて、前面にバッフルをくっつけます。

 このようにオンゾウ箱より小ぶりの箱になりました。可搬性を持たせたいので、
このようなスリムな設計になります。

  内容積=294x202x206=12.2L (ユニット、補強材を除いた容積)

 

  ダクトの計算






  寸法を間違えました。のこぎりで切ります。



  コーナークランプを2個用意しました。


  バッフルの貼りつけ。なんかバイオリン製作に似ています。





  とりあえず完成致しました。



  裸のユニットのインピーダンス

  fo=72Hz

  カタログスペックはfo=60Hzでした。

 密閉箱にいれたとき

  fc=105Hz


  直径3cmのダクト2個(長さ47mm)

  fd=68Hz

  バスレフでのQはいまのところ計算法がないので、密閉で計算しておき
ます。それより若干高いと考えていいのではないでしょうか。

  Q=0.33*(105/72)=0.48   

  だいたい0.5くらいでしょうか。

 周波数特性(ホワイトノイズ入力)





  音質評価

  これまで16cmを聴いたことがなかったのですが、今回概要がわかりました。
8cm、10cm、20cmのFEシリーズはヘビーデューティな低音なのですが、16
cmは弱々しい感じがあるようです。

  透明度はプレスフレームのものにくらべ相当すぐれているようです。

  高域はきめの細かい感じはしますが、最高域は出ていないのでモニターには
使えません。コンシューマーユースでソースを選べばツイータなしで十分実用にな
ります。

  結論だけ言うと、ダクトチューニングはこの状態でゆくことにします。

  知的であり、肉感的でもあるかどうかはイエスという答えになります。口径が
大きいと、低音に暖かみがでて解像度が上がります。そのことは十分感じられま
した。

  小口径のレゾネ−タ付き1WAYでもレゾーネーターというコントラバスに匹敵
する音域の楽器を持っているわけなので、量的には問題ないわけです。しかし
如何せん元になる信号の情報量が少ないため解像度が落ちるわけです。その場合
ニヤフィールドの試聴にすればそのことはかなり改善されます。


  試聴開始1ヶ月後

  いろいろ試すうちにぶんぶん鳴るようにできました。このときのアンプは
K405アンプとか、近未来アンプであり、ASTアンプ群ではありません。

  目論見とは違ってきましたが、どちらも自前のアンプではあるので問題
はないわけです。

  部品が入れば、全部ASTアンプにしてみましょう。


  全部ASTアンプにしてみました。それによってわかったことは、16cm
システムではfo共振のエネルギーが相当大きいということです。ASTアンプ
にするとその部分が抑制されるので低音が乏しくなるわけです。プリアンプ
で補正してもあまり力感がでてきません。


  その後


  レトロなアンプとの組み合わせが、なかなか素晴らしいようです。透明感
はいままでに無いほどで、低音の量感もあり、いいバランスです。

  ビートルズのほとんどの曲でベースがよく聞え、武満徹などのオーケストラ
では全く素晴らしい音がします。

  ASTシステムではありませんが意外と良いので当分このままでゆきます。


  その後

  パイオニアA01をAST化してつないでみました。トーンコントロールも
ちょうど良い塩梅に設定できます。



  これでやっと使いこなせた感じがします。


  Snsui AU-α607 Mos Premium を導入



  これはいわゆるBTLアンプ(バランス出力アンプ)なのでAST化は
容易にはできません(ほとんど不可能)。

  軽量パルプコーンをネットワークなしでドライブすると、MOSアンプの
特徴が100%発揮されます。情報量が多く、押出し感がないという性格
も、このような軽い負荷ではふつうのアンプとは違うことを見せつけてくれ
ます。

  ストレスなく高速回転するチタンコンロッドのアルミエンジンを大型
サルーンに搭載しても無意味ですが、2シーターのライトウェイトカー
に搭載すれば素晴らしいフィーリングをもたらすのと同等といえるでしょう。

  高域は清涼感があり、低域のエネルギー感も十分です。自作しなくても
、AST化しなくてもいいのではないかという音が得られています。


  その後WinISDを使って予想特性を調べてみました。

SPL(1Wの出力で1mのときの音圧)


Group delay


  あっという間に設計ができてしまいます。特性の評価も。




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